これは私が小学5年生の時に小学校で体験した話です。
私の地区の小学校は、昔は人数がかなり多かったのですが
いまは数える程度となっていました。
校舎は2階建てで、大きくはなかったのですが教室はなかなかの広さでした。
給食の準備なども人数が少ないのでほとんど全員でするのですが
放送当番のひとだけは給食の献立を言って、あとは準備ができるまで待つだけでした。
その日私は放送当番で、献立を言い終わった後に暇だったので
2階の資料室で図鑑をよんでいました。
資料室には扉がなく、校舎のほぼ真ん中の位置にあり図書室は端っこにありましたが、使っていない教室の数が多かったので
今の資料室を資料室としてそのころ使うようになりました。
給食の準備はいつも15分くらいでおわるので、10分位経ってから下に降りるのですが、5分くらい経ったときでしょうか。
校舎のいちばん端にある図書室からトン、トンと壁を叩くような音が聞こえたのです。
「誰もいないはずなのに変だな?」と私は思い、資料室を出て図書室の方に歩きだしました。
端っこと言っても大きくはない校舎なので、ものの15秒歩いたぐらいで着く距離でした。
ですが、図書室に着く前に私は違和感を感じたので立ち止まりました。
図書室の入口があいているのです。
図書室の入口は、引き戸式のドアになっていて普段なら空いていても別に不思議ではないのですが…
資料室は階段をあがって廊下を図書室側にほんの少し歩いたぐらいにあるのです。
最初2階に上がってきて、図書室を見たとき扉は閉まっていたような気がするのです。
しかも扉の空き方が、小学1年生くらいの子供しか通れないような
とても狭い空き方をしていました。
誰か来ても必ず目の前を通るので気づかないことはないのです。
私は気味が悪くなって、引き返そうとして2、3歩歩いたときでした。
後ろから言い様のない気配を感じるのです。
わたしは急ぎ足で歩き、振り返らないようにして階段に向かいました。
ですが階段に近づくにつれてほっとしてしまい、後ろを振り向いてしまったのです。
するとさっき私が立ち止まっていた場所に全身真っ赤な服を着た女の子が立っていました。
手には赤いシューズを持っていて足首から下はありません。
私はそれを見た瞬間固まってしまい、声を出すこともできませんでした。
私は少女を見つめたまま動けなくなり、気がつけばその場に崩れていました。
どれぐらい時間が経ったのかわかりません。
ただわかる事はいま起きていることが現実だと言うこと、
そして少女との距離が確実に狭くなってきていることだけでした。
「トン、トン、」
不気味な音とともに少女は近づいて来ます。
………しかし資料室にいた時に聞いたこの音、
まるで硬い何かを地面に押し付けるようなこの音はなんなのでしょうか。
そしてその音は聞けば聞くほど足音のように聞こえてくるのです。
私はより一層恐怖をおぼえ体は硬直していく一方でした。
ですが少女は止まることなく私に向かって近づいてきます。
私はただどうしていいのかわからず、頭では今すぐ逃げ出したいと思っていたのですが体が言うことを聞いてくれず、ひたすら神に祈る事しかできませんでした。
……少女の紫がかった顔と足首からのぞかせている切断されたような骨を見るまでは。
私は完全にパニック状態に陥っていました。
「オレは死ぬんだ、死ぬんだ、死ぬんだ」
頭の中でその言葉だけがこだまし、少女との距離は、いよいよ教室1つぶんくらいになっていました。
目の前がだんだんと暗くなり、「いよいよ死ぬのか…」と覚悟したその時でした。
「〇〇ー!!もう給食の準備はとっくにできて皆待っとるんだぞ!
さっさと下りてきて席に着かんかー!!」
下の階から先生の叫び声が聞こえてきました。
その時私は弾かれたように我に帰り、気がつけば階段を一目散に駆け下りていました。
青ざめ、すごい勢いで下りてきた私を見て普段なら皆に嫌われるような恐い先生だったのですが
その時だけは異変に気づいたのか、
「ど、どうした〇〇!
上で何かあったのか!」
そう聞かれて私は再び恐ろしくなり、給食室に逃げるように駆け込みました。
給食もほとんど喉を通らず、普段から給食をよく食べる私が残したので皆驚いていました。
そのまま昼休みに入り、外で皆がサッカーをしているのを朝礼台からボーッと眺めていると
後ろから先ほどの恐い先生が近づいて来て、
なにやら深刻な顔つきで私に話かけてきました。
「〇〇、お前給食時間から様子がおかしいぞ。
給食も残していたしやはり上で何かあったのか?」
私は思い出したくなかったし、話したところでどうせこの人は信じてくれないだろうと思いしばらく黙っていました。
私が何もしゃべらず、長い沈黙が続きましたがその沈黙を打ち破ったのは先生でした。
「……おまえまさか2階で少女を見たのか?」
……!!!
私が驚いた表情を見せると先生は少し悲しそうな表情を見せ、私の隣におもむろに座りました。
「そうか…お前は見てしまったんだな……
これから少しオレの昔話をしてやる。聞くか?」
「…まさか先生も見たことがあるんですか…?」
「まあ聞け…」
この時先生は52歳、
この話は今から40年以上昔にさかのぼります。
先生は小学校時代、私と同じ小学校に通っていました。
先生は昔から図鑑や歴史などが大好きで、図書室をよく利用していたそうです。
そんな時、先生はある少女と出会いました。
図書室に来るといつも先生より早く来ていて図鑑や歴史の本を見ている少女。赤が好きなのかよく赤い服を着ていたそうです。
……そう、この少女こそ私が見た「あの」少女なのです。
先生とその少女は本の趣味も合い、次第にしゃべるようになったそうです。
名前は加代子、先生いわくかよちゃんだったそうです。
先生と少女はいつも図書室で会っていて、少女と話していくうちに次第に一緒に帰ったり遊んだりするようになりました。
先生は少女を好きになり、少女は初めてできた男の子の友達だったそうでとても喜んでいたそうです。
そして時は流れ…
翌年の夏休み直前の終業式の日、悲劇は訪れました。
少女と先生はこれから始まる夏休みにすっかり舞い上がってしまい、学校が終わったあと夕方までずっと遊んでいました。
そして6時ごろにお互い家に帰ったそうです。
しかし少女は家に帰っ学校にシューズを忘れてしまった事に気づき、シューズを取りに1人で学校に行きました。
学校には視聴覚室があり当時はそこの窓の鍵は壊れていてそこから入れていたそうです。
少女はシューズを取り終え、このまま家に帰ってくるはずでした。
しかし夜になっても少女は帰ってこない、家族は心配して少女を探しに行きました。
近所の人も協力してさがしていると、
踏切近くに倒れている少女を見つけたそうです。
しかし少女には足首から下がなくすでに亡くなっていました。
翌日の夏休み初日、少女の葬式が行われました。先生は嘆き、「オレが遊びに誘わなければ、オレのせいで……!」と後悔し、それこそ死にたくなるほど後悔したそうです。
廊下4~再会~に続く。
怖い話投稿:ホラーテラー フリーメイソンさん
作者怖話