その翌日…つまり今日、ちょっと不思議な体験をした。
だから、その話をしてみる。
だから今回は、笑えるネタや奇人変人は出てきません。御了承を。
私は今、派遣業界から足を洗って地元で働いている。
外での仕事で、ここ2週間は毎日片道1時間以上かけて、山の中で働いている。
山の中だから、野生動物がいっぱいだ。
狸、狐、イタチ、鹿、今は冬眠に入ってるだろうが熊、そして猪。
猪が一番厄介な動物らしく、田畑は全部が猪対策と思われる網や柵で囲まれている。
野生動物が豊かで、猪対策の網…これが今日の体験のキーポイントだった。
午前の仕事が終わり、昼休憩を終えて午後の仕事が一段落した時。
私は、何かを感じて振り返った。
目の前には、柵と網で囲まれた小さな畑。その奥…泥地なんだが、何か変だ。
背景から浮かび上がる、同化した色…それが私が振り返った瞬間、
「ピイ…」
と弱々しく鳴いた。
それは、右の羽が網に絡まり動けなくなった、フクロウだった。
かなり弱っている。
が、視線は私に向けられている。
フクロウは夜行性だから、昼はあまり目が見えないと言う。
しかし、フクロウの視線は真っ直ぐ私に向けられていた。
必死に助けを求めるフクロウの気持ちが、私に伝わったとしか思えなかった。
実際、私が言って指で指し示さないと周りの人も気づかなかった(見えなかった)ほど、背景と同化していたし。
私は、町役場に電話して助けを頼んだ。
人様の畑に無断で入ることは躊躇われたし、仮に私が助けても仕事中だから治療すらしてやれないから…。
町役場から、若い男性と優しげなオジサンが来て、フクロウは救出された。
救出される間、オジサンに優しく抱かれたフクロウは、ジッとしていた。
「保護します。しかし、よく分かりましたねぇ」
と、オジサン。
助けられたフクロウは、「よかったな」と話し掛ける私を、弱々しい目でジッと見ていた。
まるで、「ありがとう」と言うかのように。
因みに…フクロウはオジサンの見立てでは、網に絡まって数日は経っているらしい。
偶然と言えば、それまでの話。
しかし、何故私はフクロウを「絶対に助けたい」と思ったのか。
役場の人が来るまで、フクロウに話し掛け続けたのか。
何日も助けを求めていたフクロウに、私が気づいたのか。
タイミングがタイミングなだけに、不思議だった。
怖い話投稿:ホラーテラー 元業担さん
作者怖話