とにかく目についたパチンコ屋には全て行ってみよう。
必ず見つけなくては。
しかし、一店目も二店目も三店目にも 弟はいなかった。
そしてこれで七店目…。
もう、外は真っ暗になっていた。
腹も減った…。
ここにいなかったら、正直なところ もうお手上げだ…。
捜すとこなんて もう…。
騒がしい店内に入り、店員に
『〇〇という人が働いていませんか?』
と聞いてみた。
『え!?なんですか?〇〇?う〜ん従業員にそういう人はいませんね〜。あ、でも一応店長に聞いてみますね!』
そう言うとその人は、事務所へ走って行った。
少しすると店長らしき人が僕を手招きしている。
もしかして、何か知っているのか!?
心臓がドキドキしている。
走って事務所へ入ると、店長が
『〇〇君の知り合い?』
と聞いてきた。
『あの!兄なんですが!』
『あぁ、お兄さん?〇〇君ね、二週間前に辞めちゃったんだよね。』
『え!?そうですか…』
『でも、他のパチンコ屋にいる可能性は高いから 電話して聞いてみるといいよ。 ちょっと待ってて?』
そういうと店長は何かを書き出し、僕に渡した。
『ここに電話したらいいよ。これ、この辺りのパチンコ屋全部の名前書いといたから。』
『ありがとうございます…』
それだけ言うと 僕は店を出た。
店長がくれたメモには、僕がまわった店の名が並んでいた。
もういいよ。ホントもう いい…。
自転車を押しながら、僕は呟いた。
疲れていた。
もう何も考えられなかった。
とぼとぼ川沿いを歩いていると橋を見つけた。
ここなら、寝るのにいいだろう。
僕は橋の下で 膝を抱えしゃがみこんだ。
山道の下り坂で転んだ膝が、今頃になって痛み始める。
ごめん…。弟見つけられなかったよ…。ごめんなさい…。
その夜 僕は夢を見た。
父さんが居間に座り、新聞を広げて読んでいる。
『父さん…?』
父は僕に気付くと、眼鏡を外して微笑んだ。
『なんだ、怪我しとるじゃないか。ケンカでもしたのか?』
『これは…これは…なんでもないんだ、父さん…』
父の話し方が あまりにも普段どおりで、涙が出てきた。
父は薬箱から塗り薬を出し、僕を呼んだ。
『ほ〜ら、これを塗ってやるから!もう泣くんじゃないぞ〜』
『ふふっ…。父さん、もう子供じゃないんだから。』
『子供はいくつになっても子供なんだよ。』
薬を塗り終わると、父は真面目な顔してこう言った。
『あのな、父さんの事なら 何も心配ない。□□寺に行きなさい。それだけで あちらさんはわかってくれる…』
そう言うと 父さんは消えてしまった。
目を覚ますと朝だった。
僕の顔は涙で濡れていた。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話