今年天に還ってしまったけど、我が家に白い猫がいた。
捨てられていて、烏に頭を突かれていたのを、弟が拾ってきた。
両親は弟には甘いので、別居している弟に押し付けられたけど我が家の一員になった(拾ってきたのが私だったら、間違いなく拒否る)。
ミルクと名付けられたその猫は、凄く人懐こい子で、私によく懐いて一緒に寝るようになった。
不思議と、この子といる間は霊体験や悪夢を見たことが無い。
白い動物は神様の使い、と言うから案外守護してくれていたのかも知れない。
不思議と、毎朝6時過ぎると何かしらして私を起こす。
おかげで規則正しい生活をしていた。
ある日は、腹にドスッ!という衝撃に「ぐえっ!」と呻いて目が覚めた。
ミルクが私の腹を踏み台に、棚に飛び乗った衝撃だった。
怒る気にはならなかった。
ある日は、枕元でチャッチャッチャッと音がする。
枕元を見ると、ミルクが後ろ脚で立って、前脚で割り箸を回して遊んでいた。
目が合った時の、
「あ…」
という顔でフリーズしたのが懐かしい。
器用な子だった…。
このままだと、「サイト違い」とお叱りを頂きそうなので、ちょっと不思議な体験を。
ミルクが天に還ってしまって、落ち込んでいたら、顔をフワフワしたもので撫でられた。
「あ…」
何度か経験があるその感覚…生前、ミルクが私が落ち込んでいる時に、必ずした尻尾で顔を撫でる感覚だった。
「悲しまないでよ」
と言われている気がした。
ミルクはそこに、いなかったけど。
その後も、しばらくはいろいろあった。
私の部屋の前に来た時の合図…軽く一回、
トン…
と廊下の床を鳴らす音。
ドアを開けても、ミルクはいない。
お気に入りの場所だった、私の部屋の窓辺からテレビに乗った時の音。
勿論、ミルクの姿は無い。
ミルクの姿は見えないけど、家の中を散歩していたんだろうな…と思う。
そして、ある日を境に…明確じゃないけど、おそらく四十九日が過ぎてから、ミルクの気配は消えた。
ちゃんと、夢の中で挨拶していった。
両親はミルクを喪ったショックが大きいので、しばらくは猫は飼わないだろう。
でも、私はまた何時か猫を飼いたい。
犬好きの私を猫好きに変えてしまった、ミルクと同じ、白いペルシャ猫を。
怖い話投稿:ホラーテラー 元業担さん
作者怖話