遺された写真で見る祖父母は、いつも一緒に穏やかな笑顔でいる。
夏は一緒に扇風機にあたり、冬は一緒にコタツに入ってにこやかに話してた。
喧嘩したとこなんか、見たことない。
共に戦時中を生き抜いて添い遂げた、夫婦だからだと思う。
私は祖父母に懐いていて、幼い頃はいつも祖父母の部屋で、戦時中、戦後の話をよく聞いた。
祖父は兵士として満州に行き生還、祖母は一人で子供達を守った。
その過程で、戦地や戦後の様々な話を聞いた。
でも、それはまたいつか…。
私が20歳のクリスマスイブ…祖母が亡くなった。
県外にいた私は、ショックで雪の降る街をさ迷った。
俯いて歩く私の顔を、笑いながら覗き込むカップルが恨めしかったっけ…。
翌日、実家に。
礼服が無かった私は、成人式の祝いに祖母が買ってくれたスーツで参列した。
そのスーツは、今でも形見として持っている。
仲の良い夫婦は、日をあけずに逝く…と言うけど、その通りだった。
年が明けた1月4日、後を追うように祖父も他界した。
祖父の葬儀が終わり、母から聞いた話に私は泣いた。
祖母が亡くなった時、祖父は病院で寝たきりの状態だった。
正直、意識も混濁して、話すことも出来なかった。
しかし、祖母が亡くなった夜…祖父は病院のベッドで、涙を流しながら天井に震える手を伸ばし、
「おお…おお…」
と声をあげていたそうだ。
「きっと…おばあさんが、おじいさんを迎えに行ったんだよ…。仲、良かったもんね…」
私も、そう思う。
理想の夫婦像は?と尋ねられたら、迷わず祖父母と答える。
同じ人、いるんじゃないかな…?
怖い話投稿:ホラーテラー 元業担改め、まささん
作者怖話