今朝は寝不足でイライラしていた。
昨夜寝ていたら、胸に重さを感じた。
目を開けると、長い髪の女が俺の上に乗っかって顔を覗き込んでいる。
眠りを邪魔された俺は、女の髪を鷲掴みにすると、そのまま引きずって窓から放り投げてやった。
女はヒーとか言いながら落ちて行った。
いい気味だ。
玉子焼きを作ろうとして、卵を割ったら中から大量の髪の毛が出て来た。
昨晩の女の仕業か?次に来たらきっちりカタにハメてやるからな。
それにしてもセコい仕返しだ、そんなヒマがあったら、もっと人を怖がらせる練習をしろ。
ふとテーブルの下をみると、頭から血を流したハゲオヤジが、体育座りをして俺を見上げている。
咄嗟にオヤジの顔面に蹴りを入れると、ケヒッとか言ってひっくり返った。床が血だらけになったので、オヤジの着ていた背広を脱がせて掃除させた。
オヤジにパンの耳をやったら、嬉しそうに消えて行った。
もう二度と来んなと思った。
出勤のため車に乗って足元を見ると床から左手首が生えていた。思いっきり踏んづけてやると、足の下でジタバタするのが面白くて、つい会社に着くまでずっと踏んづけていた。
足を離したら、紫色に腫れ上がっていた。ちょっと可哀想な気がしたので、会社から湿布を持って来て貼ってやった。
ついでに缶コーヒーも持たせてやったが、口がないから飲めないかな?
後から考えると、少々酷な事をしたかも知れない。
職場に着き仕事を始める。ふと机の下を見ると、朝のハゲオヤジがまた体育座りしている。
しつこい奴だ。
襟首を掴んで、今日休んでいるYの机の下にぶっこむ。明日Yが来るまでそこにいろと脅すと、涙目でうなずく。
昼飯の時に、玉子焼きとおにぎりをやったら、少し笑った。
キモい。
昼休みが終わって、PCの電源を立ち上げたら、貞子が浮かび上がった。ZIPで圧縮してメールに添付、YのPCに転送。YのPCから課長のPCに送信。
暫くして、課長が悲鳴を上げていた。今日は早退するらしい。顔が真っ青だった。
相変わらず胆の小さい野郎だ。
仕事が終わったので、ハゲオヤジに帰ると伝えると、お疲れさまでしたと挨拶してきた。
なかなか礼儀正しい奴だ。
車に乗ると、もう手首はなかった。缶コーヒーも空っぽだった。
飲んだのか?どこから飲んだのだろう?
不思議だ。
家の近くの駐車場に車を止めて、家まで歩いていると、大きなマスクを付けた女が、私綺麗?と聞いて来た。
マスクをしてちゃワカランと答えると、マスクを外した。口が耳まで裂けていた。
少し気の毒になったので、携帯で救急車を呼んでやる。女が慌てて逃げようとするので、
押さえつけて救急隊員に引き渡した。女は迷惑そうな顔をしていた。
人の善意が分からん女だ。
家に入って、ビールを飲もうと冷蔵庫を開けたら、昨夜の女が中に入っていた。
どこから入ったんだ!?
ムカついたけど、あんまり寒そうだったので、風呂に入れてやる事にした。
お前の髪結構臭いからしっかりシャンプーとリンスしろよって言ったら、顔を真っ赤にしてうつ向いた。
女に言うことじゃなかったかなと少々後悔した。
俺のパジャマとバスタオルを置いて、着てた物は洗濯するから、洗濯機に入れておけと言うと、か細い声でスイマセンと言った。
どいでもいいから、肩まで浸かって100数えろ。
ビールを飲む気が失せたから食事の支度をする。
二人分。
出来上がる頃に女が風呂から出てきた。テーブルの上の食事と、俺の顔を交互に見ているので、俺がうなずくと嬉しそうに席についた。
テレビをつけるとお笑いをやっていた。
お笑い見て笑ってんじゃねーよ。
飯食ったら帰れよと言ったら、着る服がないといいやがる。そうだった、洗濯中だった。
仕方ないから今晩だけは泊めてやる事にする。俺は眠くなったから先に寝る事にする。
いいよ、好きなだけテレビ見てろよ。
俺はソファで寝るからお前はベッドで寝ろと言うと、悪いから一緒に寝ようと言う。
幽霊と一緒に寝れるか
断る!
爆睡していると、夜中に携帯に着信。出ると、わたしリカちゃん。今コンビニにいるの。
うるせーよ、切る。
また着信、私リカちゃん今近くの公園。
しつけー、切る。
リカちゃんの話は知ってんぞ、次は電話ボックスだな。
ムカついたから、外に飛び出して電話ボックスまで走る。リカちゃんはまだ来ていないようだ。
待ち伏せしているとリカちゃんがやって来た。電話ボックスに入ろうとしたところを捕まえて、近くの電柱にぶらさげてやった。
ついでに携帯出して、下からスカートの中を撮ろうとしたら、必死でスカートを押さえて泣きわめく。
許してくださいと泣いている。
ぜってー許さねえ。
誰かが俺の肩を叩くので振り返ると冷蔵庫女がいた。
妹を許してやってくださいとかぬかしてやがる。
お前ら姉妹かい!
アホくさくなったのでリカちゃんを下ろしてやって、家に連れて帰る。
二人して泣いて謝るので怒る気も失せた。リカちゃんにも飯を食わせる。
食ったらとっとと寝ろこのバカ姉妹が!
朝起きたら、誰もいなかった。俺のパジャマとバスタオルは、洗濯してきちんとたたんであった。
部屋も綺麗に掃除してあった。洗い物も。
なんか、お礼の一言もないのんかい!
礼儀知らずのバカ姉妹にイライラしながら、車に乗る。
発信させようとしたら、また手首がいる。手にコーヒーを持って俺に差し出す。
この野郎なかなか気がきくじゃねーか。
ちょっと機嫌が治る。
途中コンビニに寄って、ハゲオヤジの朝飯を仕入れる。
会社に着いて、吉田のデスクの下を覗き込むと、いた、オヤジ律義に体育座りしてる。
オヤジに朝飯やって、お前もういいよ、朝飯食って帰れって言ったら、弁当大事そうに抱えて消えて行った。
ふと机の上を見ると、手首が付いて来てた、おれが昨日接着剤で固めたゲンコツを、必死で開こうとしている。
なんだ、お前ら対かよ、仕方ないから給湯室でぬるま湯につけて戻してやった。
お前らも帰れ!
仕事が終わって帰宅。
玄関を開けると、シチューのいい匂いがしてきた。なんでだ?
リカちゃんがお帰りなさいと走って来た。
冷蔵庫女はキッチンで料理している。
お前ら帰ったんじゃねーのかよ、勘弁してくれよ!
何故か顔がニヤついて締まらない。
冷蔵庫女は、お帰りなさい、お風呂にする?それともご飯?などと聞いてくる。
テメエは俺の女房か!?
ウザい、キモい。
でもまあ折角だから風呂に入る。リカちゃんも入れてやる。
この野郎、ジタバタするんじゃねえ、シャンプーが目に入っただと?
辛抱しろ!
こら、泡を流さないで湯船に入るんじゃねえ、タオルを浸けるな、変な歌うたうんじゃねえ。
石鹸箱をタオルでくるんで石鹸をこすり付けて。フーッと息を吹き込むと泡がブクブク。
ほら、これで遊んでろ。
風呂上がったら、飯の支度が出来てた。冷蔵庫女がビールを持って、お疲れさまだと。
だからぁ、お前は俺の女房かっつーの!
こら、リカちゃん、食べる前はいただきますしろ!
三人?で飯食ってたら電話がかかってきた。
出ると病院から、昨日病院に送った女が、所持金もなく、身寄りもないから俺になんとかしてくれだと!?
ふざけるな、そんな事知るかよ!電話を叩き切った。
冷蔵庫女とリカちゃんが心配そうに俺を見てる。
そんな目で俺を見るなコンチクショー。
イライラするからタバコを買いに表に出ることにする。冷蔵庫女、飯もう一人前用意しとけ。
口裂け女を乗せて自宅に戻る。冷蔵庫女とリカちゃん、二人声を揃えて、姉さん!
あなたたちは三姉妹だったのですか!?
もう勝手にしやがれ!
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話