うちのじいちゃんの話
戦時中じいちゃんは沖縄に従軍していて、最前線で敵軍と戦っていた。
ある日の夜、鈴虫が鳴く声が森に響く静かな夜。両軍一時休戦中。じいちゃんは相棒の吉さんといた。じいちゃんは故郷に手紙を書いていた。横で吉さんはアメリカ兵からくすねたタバコを吸って読書をしていた。じいちゃんは書いてる途中小便がしたくなり、外にでる為に立ち上がった。
その時突然の銃声。幸せな一時はそう長くはなかった。急襲だった。じいちゃんと吉さんはすぐにうつ伏せになった。テントはあっという間に蜂の巣状態。
銃声の音に混じり叫び声や怒号が響く。
吉さんはほふく前進でテントの入口にある銃剣を取りに行く。
二人は入口の前にある大きな岩に二人は身を潜める。
嵐のように降り注ぐ弾丸がいたる所から飛んできて手も足も出せない。
少し先には大きな爆発。2、3人が宙を舞う。上を見ればいつの間にか爆撃機が大きな音をたて旋回。無差別に爆弾を落としてくる。
横を見れば生き残った仲間が同じ様に岩や木に身を潜めてる。
どうしようか迷っていると後ろの方からかすかに上官の声がした。
「撤退しろ―!!」
しゃがみながら基地を目指しじいちゃんが後ろ、吉さんが前に。少し進むと目の前に大きな大木が倒れていた。吉さんは大木を越えようとすると枝が引っかかってしまった。取ろうと必死にもがくと、取れた拍子に上半身が反ってしまった。
「パンッ!」
吉さんはうつ伏せに倒れこんだ。銃弾が飛び交う中必死に吉さんを引きずって、途中大きい岩に隠れては移動。吉さんも最初のうちは「痛い!」「スマン」と喋れていたが徐々に口数が減り、なんとか基地本部に着く頃には既に虫の息だった。
吉さんをすぐにベッドに寝かせた頃にはもう死んでいた。急いで衛生兵を呼ぶと一人こちらに向かって走ってきた。
血だらけの吉さんを見た衛生兵は銃創部と吉さんの状態を見て首を横に振り走り去ろうとした。
じいちゃんは衛生兵の腕をとり、何故しっかり診てくれないんだ?と聞くと、
「生きてる人から先だ!」
と言われ腕を離した。
心の片隅で分かってはいたが…何もしてやれなかった事に悔しくて涙が溢れた。
数分間吉さんの顔を見つめていると吉さんの肌着から何かモゾモゾ動くのが分かった。
それが上の方にのぼって肌着からその姿を現した。
てんとう虫だった。
続
怖い話投稿:ホラーテラー 万年みひろ命さん
作者怖話