気がつくと俺の右手は奴の胸を貫いていた。
しかし、手応えがない。
「無駄だよ。私にそういった攻撃は無意味だ。」
立体映像か?いや、さっきまで奴は私に触れたりもしている。そもそも今の技術を以ってしても、実像と見分けがつかないとも思えない。
「エクトプラズムだよ。」
!?
「何を不思議がっている?君の手足にもエクトプラズムがコーティングしてあると言っただろう?」
「そんなバカな!エクトプラズムは生物が発するエネルギーだ!それを通じて霊体と生体は互いに干渉出来るが、命あるものしかエクトプラズムを有せない。エクトプラズムのみの存在など有り得ない!」
「有り得ない?そんな事はないさ。君が眠っている一年の間に随分と技術は進歩したのだよ。邪魔者が眠ってくれていたお陰でね。」
土留の目が妖しく光る。
・・・この目だ。
この目にただならぬ危険を感じた私は、兵器開発を意図的に遅らせてきた。
「今の我々にはこんな事造作も無いことさ。私は今この場に霊魂とエクトプラズムのみで存在している。最も、体は別の場に保管してあるがね。」
土留は得意げな顔をして右手を振り上げた。
「それにこの体は何かと便利でね。意図的に物質に干渉することも出来る。」
その瞬間に奴の右手は私の頬に放たれた。
「半物質の役得さ。言うなれば半生物。魔界転生の天草四郎とはこういう気持ちだったのかねぇ?」
私は口の中に鉄臭い血の味と共に歯を食いしばった。
怖い話投稿:ホラーテラー 仮面ライアーさん
作者怖話