中編5
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実は…

私は幽霊の姿を一度だけ見た経験がある。ただその幽霊は特に何かを仕掛けてくる事もなく、じっと立っていただけだった。あまり怖くなかった。

むしろ姿の見える幽霊より、ラップ現象や誰もいない所から聞こえる声、鳥肌の立つ霊の気配、突然押されたり。と見えない霊の方が怖かった。

私には少し霊感があるのかもしれない。心霊ビデオや画像に映る霊が説明されなくてもすぐに分かってしまう。

文章では上手く説明できないが、自然と視線が霊にロックオンされる?漠然と景色を見ていて、急に視点が合う感覚。

幽霊を信じていない人には馬鹿らしいと思われるかもしれないが、幽霊っていると思う。現在、科学や機械文明の進化により作り物の映像や、自然現象の偶然が生み出した物が数多くあるのも事実。

しかし、その一方で最新の機械を使って検証しても科学的に説明できない事もある。過去の経験の中で一番疑問の残った話…

昔、友人達と神社を訪れた。境内で鬼ごっこをしていた時、一人が必死に逃げるあまり、境内の置物に激突して破壊した。

古びた神社なので、俺たち以外誰もいない。だから「やばい」とか「おこられたらどうしよう」なんて考えなかった。罪悪感もなく遊び続けた。

そして、かんけりをした後に事件は起きた。日が沈み始め帰る事になったが、置物を倒した奴(A)がいなくなった。みんなで探しても見つからないし、名前を大声で呼んでも返事がない。

俺たちは入口に止めてある自転車を確認したが、Aの自転車はあった。結局、しばらく探しても見つからないAを諦めてみんな家に帰った。

夕食時にAの親から、ウチの子知りませんか?と電話が掛かってきた。俺は怒られる事が怖くて、知らない。と嘘をついた。

しばらくすると、また電話が掛かってきた。今度は俺ではなく、母親と話した。母親は電話を切ると俺を睨み、頭を叩いた。

そしてAの家に二人で向かった。

Aの家に着くと一緒に遊んだ友人達が親と一緒にいた。友達の一人は泣いている。こいつが一部始終を白状したらしい。

俺たち子供は大人に詳しく説明させられた。そして、大人は警察に連絡する。Aの親は一度連絡していたらしいが、二回目の電話はいなくなった時間帯や場所の説明だったと思う。

その後、俺たち子供は家に帰され、大人は神社を捜し回ったらしいが、Aは見つからなかった。

翌日以降、俺たちは学校が終わると毎日神社に通ってAを探していた。そして破壊した置物に何度も謝罪した。

異変が起きたのは通い始めて三日目だった。神社に近付くと全身に鳥肌が…階段を登るにつれてひどくなる…俺だけでなく、みんな経験したらしい…

誰か一人が走り始めると、みんな一斉に走りだした。石段を駆け上がり、目の前に映ったのは、賽銭箱の前にうつむき、座るAの姿。

嬉しさのあまりみんなで駆け寄るが異変に気付く…

焦点の定まっていない目と口元には、緑色の汁と草がついていた。

何と声を掛けたらいいか分からず、俺は動揺したが…一人がAに話し掛けた。しかし無反応だ。そこで、俺たちが考えた対処法は大人を呼ぶ事。一人だけを家に帰宅させ、残りはAを監視する。

しばらく待った。この間、Aに変化はなかった。ただ誰かに囲まれている様な不思議な空気?感覚があった。辺りを見回しても、誰もいないが…

ようやく境内入り口から足音が聞こえる。現れたのは連絡役の奴ではなく、Aの母親。Aの母親はAに駆け寄り抱き締めた…ドラマのワンシーンみたいに。

遅れること数分後。連絡役が母親を連れて戻って来た。Aの母親は泣き続けていて会話が出来ない状態…当時は今のような携帯電話などなかったので、連絡役の母親は俺たちを残し公衆電話に向かった。

警察に連絡しに行ったと思う。後から駆け付けたのが警察だったから。警察と連絡役の母親が戻って来る迄の間、少しおかしな事が起きた…

母親にすら無反応だったAが、突然意味不明な叫び声をあげ、ガタガタ震え出した…奇声を文字で表現するならば

『ッンヌィィィヤァー!!』

と、今思い出しても訳の分からない高音の叫び。叫び声以降はまた沈黙。何かに怯える様に震え続けるA。

遠くからサイレンが鳴り響き、警察二名と連絡役の母親が来た。そして、自らの意志では動こうとしないAを抱え、みんなでその場を離れた。

パトカーの後部座席にAを乗せ警官一名とAの母親で挟む。そして俺たちを残し、警官は連絡役の母親に何かを説明すると、再びサイレンを鳴らし走り去った…

色々な事がありすぎてパニック気味の俺たち子供は、連絡役の母親に連れられ、自転車を押しながら家に向かった。そして、連絡役宅でそれぞれの母親を待った。

結局、俺たち子供は各々の家に帰り、Aがあの後どうなったのか分からなかった…親達は何度かAのお見舞いに行っていたらしいが…Aの家のカーテンはいつも閉じたまま…そしてAは学校に戻って来る事はなかった。

ただ、学期の区切りに先生から転校した。とだけ伝えられて・・・俺は母親に何度もAの事を聞いたが、母親は何も教えてくれなかった。

あれから十数年が経つ。俺も成人し、一人暮しをしている。先日久しぶりに実家に帰省し、地元の友達と遊んだ時にAの話題になった。すると、ずっと実家暮しをしている友達が色々教えてくれた・・・

Aはあの日以来おかしくなり、病院ではベットに固定され・・・治療法も見つからないまま、別の施設へ移され・・・Aの母親も次第におかしくなってしまった事。俺たちの親たちがA家が引っ越すまで、Aの親へ謝り続けていた事。

実家暮しの友達も、最近になってこの事実を親から聞いたらしい。

俺は友達と別れ、家に帰ると夕飯を準備していた母親に小さな声で

ありがとうごさいます

とつぶやいた。

実は…都市伝説で投稿しましたが、Aの事件は実話だと友人に聞きました。主人公は私の友人であり、私が怖い話好きなのを知っていたので、私に話してくれました。聞いた話を私が書いたので創作になりますが…

Aがどうなったのか?

Aにあの時何が起きたのか?

今も謎のままで、後味の悪い話です。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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