黒い人は私を家の敷地の横の方にある竹林につれていこうとしてるようでした。
もうだめだ、もうすぐ林に入ってしまうというところで、ものすごい勢いで曾祖母が走ってきて「うちの子に何する気じゃーっ!!」っと叫び、その黒い人から私をひったくり、背中に庇ってくれたのです。
黒い人は特に抵抗することも逃げることもしなかったように覚えています。
私の腕には握られた形の手形が残っていました。
曾祖母は後ろを見ないようにと言いながら、私の手を引き家に連れ帰ってくれました。
そして安堵から泣き続ける私が眠るまであやしてくれました。
この黒い人については、自分なりに幼い日の恐怖心から記憶の中でそういう容姿になったのだと解釈していました。
しかし数年前、曾祖母の葬式の時にこの話を母にしたところ「その件はあんたの腕に手形の痣があったから覚えている。でもひいばぁちゃんが助けたわけない」と言うのです。
理由を聞くと、曾祖母はもうその時すでに病気のせいで寝たきりで、走ることなどできなかったとのこと。
母は当時幼い私が何度聞いても助けてくれた人は曾祖母だと言い張るため、またその時の状況を話す私があまりに怖がっていたため、助けてくれた人まであまり追及しなかったそうです。
私はあの時助けてくれたのは曾祖母だったと信じています。
ただ一つ不安なのは私をあやす中で曾祖母が言った一言。
「あんたはああいうタチの輩に狙われやすいから気を付けなぁ。しばらくはひいばぁが守ってやるけど大人になったらしっかりしなきゃだめだよ」
そして成人式を終えてから、あの黒い人の夢を頻繁にみます…
怖い話投稿:ホラーテラー はなさん
作者怖話