『逃げろ!は、早く!』
叫ぶ先輩の後ろを走る俺とK君。
そのさらに後ろには、髪の長い半裸の女。
『はぁ、はぁ…なんなんだよ、こいつはよ!!』K君が涙声で叫ぶ。
『知るかよ!』俺も、この女の人は知らない。
知りたくもない。
それは、肝試しに廃病院に来たときの話。
S先輩の車に乗り、K君と肝試しにきた。
暇だったから、10月のこんな時期に…
割れた窓から入った俺達が最初に遭遇したのは、真っ白い猫だった。
K君の猫アレルギーが幸いしたのか階段を上がっていた俺らの後ろからついてきていた猫。
先輩は、こんなとこに猫がいるなんて可哀相だと抱き抱えた瞬間に異変が起きた。
『だから、なんかあるんじゃないかって…はぁ、はぁ、思ったら これだろ!』
K君が、泣きながら怒っている。
俺も泣きながら走った。
病院の廊下を走り、上へ上へと走る。
そして、屋上に着いた。
屋上の入口を、塞ぐ物を探すが何もない。
『くそ!』先輩が、息を切らしながら発した言葉だった。
3人でドアを押さえ付ける。
シーン
奴は、来ない。
はぁ、はぁ、はぁ
3人の息だけが聞こえる。生唾を飲む音さえ聞こえる静けさだった。
『こいつ真っ白だね』先輩は猫が好きらしい。
『気味が悪いっすよ』猫アレルギーのK君が言う。
すると抱き抱えていた猫が、暴れだし先輩の両手から 落ちた。
足で着地することなく、ドサッと頭から落ちた。
『あ…』
猫は、ゴロゴロと病院の廊下で暴れだした。
『な、なんだろ急に…』
猫の気持ちなんて知りもしない。
すると急に、お腹がボコボコ膨らみ始めた。
『お、おい…腹の中に蛇でもいるんじゃねーか??』それくらい、猫の腹がボコボコ膨らんでいる。
猫は、『ギャーギャー』と叫んでいた。
『な、なんかヤバいよね…この雰囲気』
『まじで、やばい…』
ドォーン
2階にいた俺らの下から、ものすごい音が聞こえた。
そして、すぐ
タッタッタ…タタタタッ…
足音が聞こえる。
明らかに走っている。
しかも複数の足音だった。
完全に3人とも凍りついた。
ヤバい…ヤバすぎる。
冷や汗が止まらなかった。
猫は、後ろでギャーギャー言って苦しんでいるし
下の階からは足音が聞こえるし…
でも足音は、すぐ聞こえなくなった。
2階の階段から下を見ていた先輩が
『なんか遠くに行ったみたいだね…恐かった』
と言った。
本当に、心臓が止まるかと思った。
まだ猫はギャーギャー言ってるのかと思い、猫の方を見ると
猫の横に女の人が立っていた。
白いワンピースのような服を着ているけど、スカート部分は破れ ボロボロだった。
右の乳房は破れた服から出ていて
裸に1枚着ているような感じだった。
髪は長かったが、顔はハッキリ見えている。
綺麗な顔をしている。
人間なのか、人間じゃないのか区別がつかなかったが
すぐに人間じゃないと、わかった。
俺もテレビでしか見たことないけど、右手に腸?のようなのを持ち 両手は血がべっとりついていた。
最初に気付いた俺は、後ずさりさて
『あぁ…』しか声が出なかった。
それに気付いた先輩が、俺とKの腕を掴み
『走れ!!』と叫んだ。
10月なのに、やたら寒い屋上には廃材が散乱していた。
先輩は、廃材を片手に持ち 俺らもそれを見て落ちている廃材を手にした。
先輩は、剣道をやっている人で地元じゃ有名な人だ。
それを見て少し安心したけど、勝てる気はしなかった。
すぐ不安になった。
K君は、空手をしている。
俺は…野球…と、足が速いくらいしか取り柄がない。
…30分くらい時間がたったが、何も変化がない。
『いなくなったんじゃ…』先輩が言う。
その時、K君が叫んだ。
『うぁー!!』
K君の視線の先に、女がいた。
でも、顔をしっかり見た僕は気付いた。
さっきの奴とは、違う女だった。
髪は短く、歳も30代だった。
『逃げろ!』と、先輩がドアを開けた。
すると、さっきの髪の長い女がドアを開けたとこに立っていた。
もうダメだと思った。
すると、髪の長い女が屋上にいた女に向かって走り出した。
屋上にいた女も、髪の長い女に向かって走り出した。
そして、二人が衝突した瞬間に消えた。
その瞬間、屋上から必死に下へ向かい逃げた。
3人とも、全力で走った。
病院を出て車に戻ると、近くのコンビニに車を止めた。
数日後、先輩が交通事故に合って内蔵破裂で重体になった。
あいつの仕業だとK君と話したが、K君も数日後車にひかれた。
K君は、両足骨折で済んだ。
次は俺だと思い、4年が過ぎた。
今でも、街を歩いたり横断歩道や車を運転するときに周りを執拗に確認する。
怖い話投稿:ホラーテラー 福岡県民さん
作者怖話