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中編6
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丑の刻参り

今から14年前、私が18歳の時の話。

私は高専に通う学生だった。霊感と言うものを有していたかは分かりかねるが、そう言った経験をよくしていた。

今考えれば、多感な時期故の思い込みなのかも知れない。

これは、そんな思春期に体験した恐怖体験の一つである。

18歳のある日、いつもの悪友達と麻雀をしていた。私の部屋は、プレハブで本家から約2mの通路で繋がっていた。酷い田舎の町だった。

麻雀に没頭している間に時間はいつしか過ぎた。

そんな中、後輩の一人がタバコを買いに行きたいと言いだした。

時間は、夜中の1時50分過ぎ、季節は冬だった。

私は、ラッキーだと思い後輩に自分のマイセンライトも買ってきてくれと頼んだ。

一番近い自販機までは、川を渡って原チャリで1分、徒歩5分と言った所だ。いつもなら迷うこと無く原チャリでいくが、その日は近くの川の近辺で舗装工事があり、原チャリで川を渡ることができなかった。

川を渡る道は歩きで渡ることが精一杯な鉄板一枚であった。後輩は、歩きでいってくると言い、出発した。

実は、私の家からタバコ屋に行く間には川を超えた所すぐに神社があり、昔から近所の子供達の遊び場である一方、神木に五寸釘が刺さっていたり、恐怖の対象でもあった。

後輩は、そんな場所を通り過ぎながら、タバコを買いにいった。

そこは茨○県の県西地区のど田舎、街灯も何もない所である。

しばらくして、後輩が帰ってきた。

ビデオのデジタル時計を生々しく覚えている、2時18分だった。

後輩は、はぁはぁ息づいており、青ざめた顔をしていた。

私とその日集まった、その後輩以外の同級生3人は、後輩のその様子を見て、神社の前を歩きで通り過ぎるのが、余程怖かったのだろうと思い、『おい、大丈夫か?(笑)』と聞いた。

後輩は、一杯ビールを飲み、タバコの煙をフゥーと吐きながら、『いやぁ実は怖い体験を二つした』と言った。

『なになに?』と聞くと、『いやぁマイセンライトを買おうと思い、ボタンを押したまでは良いが、取り出そうとしたらバカデッカイ蛾がいてなかなか取り出せなかった』

『ははっ』(私達)

で、もうひとつは??

どうせ、ネタだと思い気軽に聞いた。

後輩は、『ゴクリ』と唾を呑み、間を置いて言った。

『じ、神社に誰かいたっ』

『ん?』(私達)

『じ、神社で白い何かが、く、く、釘打ってた!』

『!!』

後輩が言うにはこうだった。

タバコ屋で蛾を避けながらタバコを買い、さて家に戻ろうと、神社への一本道を歩いていると・・・

先の方から

『カキン カキーン』

『カキン カキーン』

と金属音が聞こえたと言う。

後輩は私達が、家から出てタバコ屋に向かっており、工事現場の鉄板の上を歩くため金属音が聞こえたと思い、気にせず前進したとのこと。

しかし、その音が近づくにつれ、そうじゃないことを認識させられる。

何故なら、私達が歩く音なら橋を渡る数秒だけなのに、その音は、後輩が神社に近づいて尚、聞こえていたと言うのである。

怖くなった後輩は、極力神社の方を見ないように、小走りに神社の前を抜けようとしたが、どうしても視界に入る神社からは、引き続き

『カキン カキーン』

そして、音が止んだと思ったら『ゾワァ』という寒気と共に白い何かが、視界の中を駆け抜けたと言うものであった。

『・・・』(私達)

沈黙

私はふっと言葉を発した

『丑の刻か、そういやあの神社、五寸釘刺さってて、問題になったことあったな』

『・・・  ??』

『あれ?確か丑の刻参りって、儀式の途中で見られたらまずいんじゃなかったっけ??』

その言葉を言い終わった瞬間、空気がはりついた。

誰も言葉を発することが出来ず、何か変わった空気感に互いに目を合わせるしか出来なかった。そんな緊張状態の中、

『カキン カキーン』

・・・聞こえた。全員が反応した。

沈黙の中再び

『カキン カキン』

『カキン カキン』

『カキン カキーン』

『カキーン カキーン』

聞こえる。そして有り得ないことに、どう考えても、近づいている。

『カキン!カキン!!』

とうとう音は、プレハブの外の垣根の辺りから聞こえる。

心拍数が上昇する。なにもしゃべれない

やや沈黙の後、部屋のドアの前で

『ガキン!ガキン!!』

『ガキン!ガキン!!』

デカイ金属音が聞こえた。

恐怖なのかどうかも分からない状態、とにかく心臓バクバクのまま沈黙。

やがて

『コン コン!』

ノックだ

まだ動けない

『ゴン!ゴン!』

強めのノック。

ハッとして、部屋の主の私は部屋のドアを勢い良く開け放った!

ガンッ!

勢い良くドアは開く。目に見えるのはただの暗闇。

何も変わった事はない。辺りを見回し、懐中電灯で照らしたが何もない。

『フゥー』と息をつき、ドアを閉め、仲間に『なんもないよ、よくわかんないけど大丈夫そ・・・』

言い終わる前に

『コン コン!』

再び緊張が走る

『コン コ』

のタイミングでドアを開く。やはり闇。懐中電灯を持ち、靴を履き、プレハブの周りを一周まわる。

『なんもねぇ』

ドアを閉め、コタツ兼雀卓に戻ろうとすると、再び

『コン コン・・・』

そして部屋の片隅から、ピシッ、ピシ!

何か凍りついた感じ。上手く言えない。空気が凍りついて、凍った空気が割れるような音。ピシッピシッ

と同時に、『コンコン』

『コンコン』ピシッ 『ゴンゴン』『ドン!』『コンコン』ピシッ

部屋の外周を回るように激しく音がなり響く、徐々に速さをまし、ついには目で追うのが精一杯。

どう考えても人間が出せる音ではない!

後輩は、頭を抱え

『ぁぁああああ!』

『ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい』

まだ音は部屋を周り続ける。友人の一人は涙を流していた。

もう一人の友人と私は比較的冷静だった。

心臓はバクバクで訳もわからないが、『ごめんなさい』を連呼する後輩と、『はわばばばばでばろばぬばろ』などと全然わからない言葉を発し泣いている友人を前にし、逆に冷静にしていられた。

やがて、嫌な音が止まった。時間にして、10秒位か、沈黙の後

『ドン!!ドン!!』

再びノック。

さすがに開ける気にならない。友人と後輩の肩に手を置きドアを凝視していると、『グァン』と空気が揺らぐ感じがし、部屋になんというか、怒りの感情が流れ込んだ。さっきまでが、はりつくような寒さなら、今度は、地震の揺れのような厚みのある感じ。

なんか・・・『あぁ殺される』って思えた。

そんな中、プレハブの小サッシのカーテンが

『ズズズッ シャ!』

開いた。人間外の存在を感じるが、私には見えない。

ただガラスに、空気の歪みみたいなものを感じる。

空気の圧力が増す。

後輩はまだ『ごめんなさい』友人は泣いてる。もう一人の友人は窓を凝視し固まっている。

私は、ビデオデッキの上の写るんですを手に取り、シャッターをきった。

窓にヒビが入る音がした。あと何か言ってる声がした。

もうわけはわからない。

何分たっだろう。わけのわからないまま全てを見続け、心臓の鼓動も正常になったころ、ふと我に返った。

後輩は寝ていた。

泣いていた友人は拝むように床にふしていた。

もう一人の友人は、私が我に返ったのを確認し、

『みた?あれ』

『?』(私)

『俺、みえちった』

『?』

『白い装束をきて、トリエボシをかぶった、ミイラみたいなおじさん?が何か唱えながら後輩を見てた』

ふしぶしは聞こえたらしく印象に残ったセリフは、『〜もっていくぞ』だったらしい。

それから、数週間後、写るんですを現像した。

写真には、友人が言ったトリエボシを被った神主の様なおじさんが写っていた。

初めて幽霊とおぼしきものをみた。

早速、同級生の親父さんが住職をしている寺に相談した。

写真をどうしたかはわからないが、私達四人は形式的なおはらいをしてもらい、『そちらの世界には関与しようとしないことだ』と言われた。

それからだ。私がそういう存在を感じられるようになってしまったのは。

長くなってしまったが、これが18の時の恐怖体験である。

怖い話投稿:ホラーテラー ヒロックさん

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