夜の11時頃だったと思うけど
僕はスクーターに乗ってコインランドリーを探していた
4月からS県に転勤となり、独身だったため会社の寮に入ったんだけど…
寮には2槽式の古い洗濯機が1台しか無く、順番待ちの時間が煩わしかったので、コインランドリーで洗濯する事にした
赴任したばっかりで、会社と寮の往復しかしてなかったのでコインランドリーが何処にあるか、全然わからなかった
ただ、会社から15分くらいの所に国立大があるのは知っていたので、大学の近くならコインランドリーは必ずあるだろうと、適当に走っていた
適当に走っていたせいか迷ってしまった
いつの間にか城下町に迷い込んでいたらしく狭い路地を右に左にと適当に走っていたが、どんどんと道幅が狭くなっていった
(まぁ…どこかに出るだろ~)
気楽に走っていたが、道は農道みたいな砂利道になり、やがて行き止まりに
右手に神社の鳥居があり、薄暗い電球がボンヤリと灯っていた
仕方なくスクーターを降りて方向転換しようと、狭い道で前後切り返しを繰り返していた
…?
(何か分からないが…嫌な感じがする…
空気が澱んでいるみたいな…)
方向転換を急ぐが道幅が狭いためなかなか回れない
…澱んだ空気から嫌な臭いが漂ってきた…
とても生臭い…
(近くに沼とかドブでもあるんか?)
とにかく獣臭だか魚臭だかわからないが異常に生臭い…
(なんかヤバい気がする!)
本能が訴える
(早く逃げろ!)
…鳥居から続く石段の上に白い靄の様な物が揺らめいていた
(霧か!?)
それはユラユラと揺らめきながら石段をスーッと滑る様に降りて来る
(霧じゃない!)
白い物体は丁度石段の幅ピッタリのサイズでスーッと降りてきてる
その時の僕は、なぜかその幅で危険を感じた
どうやって向きを変えたか分からないが、僕はスクーターを全速で走らせ逃げていた
とにかく何でもいいから!
右へ左へ曲がり続けた
怖くて後ろを振り返る事はおろか、サイドミラーを見る事も出来なかったのを覚えてる
どう走ったのか分からないが、とにかく車が行き交う広い道に出た時は
(あ~助かったぁ)
と思った
そこは会社のある場所から15km位離れていたが、
(まぁ標識を見ながらゆっくり帰ろう)
そう思いながら走り出した
下り坂の緩い右カーブにさしかかった時…
スクーターのミラーが(パンッ!)
大きな音をたてて割れた
(え?)
思わず割れたミラーを見つめた
視線を前方に戻すと、歩道との縁石がすぐ目の前に…
(ダメだ!)
次の瞬間…
僕はアスファルトの上を滑っていた
どう滑っていたのか覚えていない
頭の直ぐ後で
(キキーッ)
と、金属音が聞こえた
僕のスクーターは縦に回転してアスファルトにぶつかり火花を散らしながら滑っていた
(あぁ~スクラップだなぁ)
なぜかそんな事を考えた…
何が何だか分からないままに体が止まった
(大丈夫か!轢いたか!)
大声で叫びながらオジサンが駆け寄ってきた
後ろを走っていたらしいタクシーの運転手さんだった
運転手さんから見たら轢いた様に見えたらしい
あの時、頭の後で聞こえた金属音はブレーキの音だったのか…
轢かれる寸前だったのかも…
僕は直ぐに立ち上がり(すいません!大丈夫です!すいません!すいません!)
とひたすら謝っていた
(本当に大丈夫か?病院に連れて行ってあげるから乗りなさい)
(いえ!本当に大丈夫ですから!すいませんでした!)
またまた謝る僕
心配そうに去っていくタクシーの運転手さん
スクーターは傷だらけでブレーキレバーも折れていたけど、エンジンは無事にかかったので寮まで乗って帰った
帰ってからよく見たら、両方の手のひらの皮がズルムケだった
右足の膝が削れていて完治するのに2ヶ月かかった
でも生きててよかった
しょーもない話でごめんなさい
おしまい
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話