ご飯を食べる時にはたいていの人が
「いただきます!」って言うと思うんですが、いやもちろん僕も言うんですよ…ただ、「いただきます!」の後に小声で『乳母様の分も』って付けるんですけどね。
イツからだろう?『乳母様の分も』なんて言うようになったの。
学校で、友達と話してるときにある子が僕に「お前が飯食べる時にいっつも言う『ウバサマノブンモ』ってなにっ?」
ってきかれて、そういやなんなんやろう?家の家族は皆ご飯食べる時に『乳母様の分も』って言うから慣れちゃってたんですけど、考えてみれば可笑しな事を言ってますよね。
その日さっそく家に帰って母に尋ねてみると母は、
「ん~。お嫁に来た時にもう言ってたから知らない内に言うようになってたからなぁ。」
と…
ならばと思い父に尋ねると、「あぁ、考えてみれば可笑しいな?気づいた頃には言っとったしなぁ。」
と…
ならば父の母である祖母に尋ねると、
「あれはね…」と言って教えてくれました。「私のお爺ちゃんに聞いたんやけど、昔飢饉で家族全員食べるものが無いときにオバアが私を近くにある姨捨山(おばすてやま)に捨てれば少しは食い繋げるで、ってことで姨捨山に自分を捨てさせたの。酷い話やけどしょうがなかったんやろうなぁ…そのお陰で皆食い繋げることができて、それ以来皆がご飯食べる時に『オバア様の分も残さずに』って言うようになったんやよ。」
と教えてくれました。
『オバア様の分も残さずに』が何世代に受け継がれていく内に皆の乳母であるオバアが乳母様になり残さずにが省略されたようです。『乳母様の分も』の意味がやっとわかりました。
姨捨っていう地域には姨捨山と言われる所が本当に存在するので僕のおばあさんが話してくれたことは事実なんだと思いながら、今日もいただきます!の後に心なしか少し大きく
『乳母様の分も』って言っています。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話