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中編3
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ふるい借家で

主人の仕事の都合で、都心まで1時間ほどの場所にある会社から紹介された古い借家に住んでいました。

築40年ほどらしく、外見はなかなか恐ろしいものがありますが、水周りなどは改装され、中はわりと綺麗で住みやすいです。

これは、近所の人からきいた話しです。

以前、この家には40代くらいの温厚な夫婦が住んでいたそうです。

夫婦の間には大変可愛らしい女の子がひとりいて、歳をとってからできた子供ということで、夫婦は女の子をとても可愛がっていたそうです。

その近所の方のお子さんが、その女の子と同年代ということで、親しく付き合っていたそうなのですが、性格もとてもよく、明るい子だったとおっしゃってました。

その家族が、ある日突然いなくなったそうです。

勤め先に来ない旦那さんを心配した上司の方が家をたずねてきてわかったそうです。・・・初めに聞いたときは、みんな夜逃げかと思ったんだけど・・。

と、近所の方は険しい顔をしました。

家の中には財布や通帳などの貴重品など、全ての荷物が残っていて、ついさっきまで人が生活していたようで。

まるで、家族だけが家の中から消えてしまったようだったそうです。

家族の消息は、いまだにわからないそうで・・。

「それ以降また、ずっと空き家だったけど、不動産屋さんがちょくちょく来て手入れはしてくれててね・・火がでたりとか心配でしょ、空き家ってね・・」

「ちょっと待ってください!」

わたしは、近所の方の話しを思わず遮ってしまいました。

「また空き家になったって、どういうことなんでしょうか?

・・その家族さんが最初の住人ではないんですか?」

わたしのあまりの剣幕に、近所の方は少し引いたみたいでしたが、そんなことに構っていられませんでした。

「あたしが嫁いできた時にはお宅はもう空き家だったのよね。それより前のことはうちのおばあちゃんなら知ってるかもしれないけど、もうコレだから〜。」

といって、近所の方は頭の上で手の平を広げてみせました。

越したときから、おかしな家だと思っていました。

トイレのドアを開けて一歩足を踏み入れた瞬間、気がつくと台所に立っていたり。

押し入れに布団をしまって振り返ると玄関に裸足で立っていたり・・。

主人もわたしも、数え切れないほどこんなめにあってきました。

戸を開けるときに、こういったことが起こるということで、出来る限り家中のドアを開けたりして暮らしていました。

・・ある朝。

主人を見送って洗濯物を持ってお風呂場の引き戸を開けた時(この引き戸だけは手を放すと自然に閉まる造りでした。)

戸の向こう側に、一面の竹やぶが広がっていました。本来、洗濯機や洗面台があるはずの場所。

どんよりとした空の下で、立派で太い竹が風に揺れて、しなる音を立てていたんです。

・・なんといっていいのか、・・限界でした。

わたしは、洗濯物を廊下に放り出し、そのまま窓から外に出ました。

そこで、庭を掃除していたすぐ向かいの方に、この家に関する話しをきいてみたんです。

わたしは近所の方に頭を下げ、ジーンズのポケットにケータイを確認してから、振り返らないで駅を目指して歩き出しました。

あれから、1度もあの借家には帰らず、わたしたちは別の借家に引っ越しをしました。

あれから夢を見ます。

どんよりした空の下、風に揺られてしなる竹林の奥から、たくさんの大人や子供がわたしを見つけてすごい奇声を上げながら追い掛けてくる。

今週末、お祓いに行く予定です。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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