中編3
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精神異常者

私は小さい頃から心臓の病気を患っており、ずっと入院生活を送ってきました。

私の入院しているところは総合病院ということもあり内科、外科、心療内科などが一つの建物にまとまって入っています。

しかしその病院のすぐそばに小さな収容施設が別に建てられていました。

看護婦さんいわく、そこは精神異常者の隔離病棟とのことでした。

まあ心臓病の自分には関係のないことだと思い特に気にもとめていませんでした。

そんなある日、私の病室に見慣れない看護婦さんがやって来たのです。

どうやら新人らしく見た目も若くてとても可愛らしい人でした。

ネームプレートには『小谷』と書かれてあります。

毎日退屈な入院生活。

元から私の担当だった看護婦さんは点滴の交換などで毎日来てくれるのですが小谷さんは1週間に一度くらいのペースでしか来ません。

しかしそれでも来たときはいつも私の話を聞いてくれたりして以前よりは退屈さもましになっていました。

そんなある日の夜、私は何か窓ガラスを叩くような音で目を覚ましました。

しかしここは5階(事実上は4階ですが4は縁起が悪いので5階となっています)。

きっと風が強いのだろうと特に気にすることもなくそのまま眠りに戻りました。

しかし次の日もまたその次の日も同じ音で目が覚めたのです。

昼間は風など全く吹いてなかったのに…。

さすがに気になったので私は起き上がり窓の近くまで行きました。

そしてカーテンを開けたその瞬間…

私は思わず息をのみました。

そこにあったのは鉄棒のように木に足を掛け、逆さまの状態でぶら下がっている看護婦の姿……。

それはまぎれもなく小谷さんでした。

しかも体を大きく揺らし、その反動で頭を窓ガラスにぶつけていたのです。

目は見開いたまま視点が定まっておらず口は開いたままで全くの無表情でした。

あまりの衝撃で私は小谷さんから視界をずらすこともできずしばらく固まったまま動けませんでした。

するとその時、ぶら下がっている小谷さんと目が合ったのです。

その瞬間バランスを崩したのか引っ掛けていた足が木から外れ、小谷さんは私の視界から消えていきました。

それと同時に私は恐怖から逃れるため病院中に響き渡るんじゃないかというくらいの声で叫びました。

あとから看護婦さんに聞いたのですが小谷さんは精神異常者の隔離病棟に入院している患者さんだったのです。

小谷さんの場合は自分を看護婦だと思い込み、すきを見つけては抜け出して自分で用意したナース服を身に付け違う患者のところへ行っていたそうです。

精神異常者といっても落ち着いているときは普通なので監視の目が緩んでしまっていたのかもしれません。

しかし抜け出していることに気づかれ、病院内へ入れなくなってしまったので夜中に前に行っていた病室の様子を見に来たのだろうとのことでした。

この一件があってから小谷さんは特別隔離病棟という鍵がかかった病室に入れられているとのことです。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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