中編3
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隣人

今から6年ほど前、隣に一人暮らしのお婆さんが住んでました。

自分たち家族がそこに越してきた時から既にお婆さんは隣に住んでいて、とても愛想の良い方でした。

しかしそのお婆さんは、ある日を境に急に変わってしまったのです。

失礼な言い方ですが、頭がおかしくなったと言った方が正しいでしょうか。

お婆さんに何があったのかは分かりませんが、挨拶をしても無視するのに始まり、一人でブツブツ呟くようになり、その内その独り言も完全にイカれてしまい、暴言だけでなく、近所中に響き渡るほどの大声で卑猥な言葉を連発するようになりました。

家の玄関先には大量のゴミが放置され、ポストには紙で

「○○へ。私はあんたを許さない。あなたがした仕打ち、今になって私を苦しめ…」

というような、完全に○○という人に対する愚痴が書かれたものが無数に張られるようになりました。

いつしか近所でも有名なお婆さんになり、何度か

前の住人と喧嘩をして、その際お婆さんは放置していたゴミを投げ付けるという迷惑ぶりも見せていました。

そんなお婆さんにイラだち、ある日私はお婆さんに苦情を言いました。

「申し訳ありませんが子供もおりますので、あまり過激な発言は控えてもらえませんか」

「ここのね。猫やカラスがゴミをあさるのよ」

「ゴミもそうですが、悪影響となるので。」

「ほんとに今日は湿った天気だねぇ。猫がゴミをあさるのよね」

「あの、ですから…」

「猫は嫌いよ。今度来たらただじゃおかないわよ。ここのね。ゴミを猫やカラスがあさるのよ。あら良い天気ね。洗濯物はないけど干さなくちゃねー」

完全に頭がおかしくなっていました。

全く会話が成立しないのです。

何を言っても無駄ですし、言いすぎてとばっちりが来てもたまりません。なので私たちは極力お婆さんがいる時は会わないようにしていました。

それからしばらくがたち、夜中に目が覚めてトイレに行こうとした時、隣から猫の鳴き声が聞こえたのです。

『あの猫があさってんのかな…』

ニャーニャー…

猫はお婆さんの家から聞こえます。

私がトイレを済ませ、部屋に戻ろうとした時、その音は聞こえてきたのです。

ガチャガチャン!…ガサガサ…

ニャー

ガサガサ…

ニャーニャー

カキン!ゴトッ!

ウニャっ!!!!ニャッー!!!!ニャーニャー!!!!

ガサガサ…

ギニャー!!!!ウゲっ…

ガサガサ…ゴホン

ニ……ャ…

ガサガサ…カキン…ザック…ザック…ザック…ザック…ザック…

私はその音を耳にして恐怖のあまり動けなくなりました。

実際は何も見ていません。音だけです。

しかし、その音が物語る惨劇が目の前に浮かぶようで、怖くてずっと震えていました。

翌日、外に出るとお婆さんがいつも通り呟きながらウロウロしていました。

「これで安心。これで安心。」

そう呟くお婆さんは終始笑っていました。

音を聞いたのはそれが一回だけですが、猫がかなり多い地域だったのに、それからというもの、日々猫は急激に少なくなりました。

それからしばらくはお婆さんは姿を見せませんでした。

その3ヶ月後、かけつけた役所が家を調べたところ、腐乱死体となったお婆さんを発見したそうです。

今ではその土地は新しく家が建ってます。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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