私は、某ファミレスで店長をしております。
当時の勤務先は山間部の店で、食材を切らしてしまったりすると、隣の店舗まで往復60kmの道のりを、借り物しに行っていました。
その日も、深夜まで働き、さらに正○峠というトンネル道を経由して、麓の店舗まで、食材を借りに行きました。
そのトンネルは有名な心霊スポットで、できれば通りたく無かったのですが、ラジオの音量を上げ、目的地へ向かいました。
その帰り道、トンネル内はオレンジ色の照明が車に差し込み、いつも見慣れたカーオーディオのデジタル表示も、心なしかいつもと違って見えて、何かが起きそうな雰囲気でした。
トンネルも終わりに差し掛かり、恐怖心からかなりスピードを上げていたため、トンネルを抜けた時には漆黒の闇の中に一瞬にして吸い込まれました。
その刹那、『ドスンッ』という音が響きました。車の上というよりは、車内に何か落ちたような、質感を伴う音でした。
私は驚いてバックミラーを見ましたが、もちろん変わった様子もありません。
しかし、カーブに差し掛かると、
『つー…』
『つー…』
…と、後部座席から、衣擦れの音が微かに聞こえます。
私は直感的に、なにかがついてきてしまったと感じました。
予定していた、ジャンプの立ち読み(現実に戻ってスミマセン…)を諦め、私は早々に帰路につきました。
当時、婚約していた彼女の荷物が、ちょうどアパートの部屋に届いており、その中には、あまり部屋に似つかわしくない、古い三面鏡がありました。
ネクタイを緩めながら、横目にその鏡に目をやると、鏡の隅に小さく、部屋の角を向くようにして、着物の老婆が正座しているのが見えました。
見つかったらヤバい
そんな予感がして、理由も伝えずに、ダッシュで友達の家に転がり込みました。
いま、その三面鏡は、布をかぶせ、後ろ向きにして部屋においてあります。
彼女の家に伝わる、古い三面鏡……
振り向けばいま、なにを映しているのでしょうか。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
怖い話投稿:ホラーテラー 佐高☆将棋班さん
作者怖話