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中編5
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開かずの間

これは僕が店長を勤めていたカラオケ店での出来事です。

僕の店舗は某スーパーの建物をそのまま利用した構造でした。

一階 屋内駐車場

ゲームコーナー

受付フロント

キッチン

事務所

二階 カラオケルーム

こんな感じです。

あまり気にしてなかったのですが、屋内駐車場の角に開かないドアがありました。

なんと言うか…

ホームセンターで買ってきた様な部品で、厳重にネジ止めされているのです。

あれは年末年始の忙しい時期でした。

突然、火災報知器が作動して店内の電気が落ちました。

もちろん営業中の深夜にです。

カラオケ店では火災報知器が作動すると、お客様の部屋の電源が落ちる仕組みになっています。

イタズラで非常ボタンを押されたかと思い、事務所の火災報知器のパネルで確認しました。

すると、非常ボタンではなく一階の開かずの間にある火災報知器が作動していたのです。

変だな…と思いつつ

電動ドライバー(インパクト)を持って、問題の開かずの間に向かいました。

30分くらいドアのネジと格闘しました。

古く劣化したネジは中々うまく外せませんでした。

ようやくドアが開きます…

ギイィィ…

と!

真っ暗から人影が目に飛び込んで来ました!

僕「うわ!!」

…鏡です。

ここはトイレだった様です。昔の従業員用トイレでした。

真っ暗をライトで照らすと所々にお札のようなモノまであります。

洗面所の奥には和風トイレがあり、生臭いというか生暖かい空気が充満しています。

じめじめしていてコンクリートにはカビまで生えています。

スーパー時代の貼り紙もありました。

和風便器の底知れぬほの暗い穴からは今にでも、リングの貞子が出て来そうな勢いです。

どのホラー映画に比べても遜色ない恐ろしい雰囲気…

むしろ映画なら僕に死亡フラグが立っているでしょうね…

僕は逃げ出したい気持ちを抑え、持って来たライトで天井の火災報知器を確認しました。

ぽたっ…

僕「うっ…」

水滴が顔に落ちました。

火災報知器は漏電でショートし、それが警報を鳴らしてしまったようです。

脚立を持って来て、恐怖と格闘しながら火災報知器の配線を切りました。

店内の警報は止み、ようやく全ての問題が解決したかの様に思えたのですが

それが全ての始まりだったのです。

僕は自分の店舗にこんな怖い場所がある事を

ネタとして従業員に話ました。

僕を含め、従業員達もまだ10代20代の若い連中です。

当然の如く、閉店後に肝試しが始まりました。

閉店の時間は朝5時くらいで少し明るくなる頃でしょうか…

皆で順番に入りました。

今思えば、僕は少しばかり危険なモノを感じてはいたのですが…

リングの貞子を想像しての恐怖だと思い込んでしまっていました。

肝試しの役目を終えた開かずの間を、もう一度電動ドライバーでネジ止め封印し、その日は何事も無く帰りました。

もう開かずの間が話題に出なくなった頃でしょうか…

年末年始の忙しさが終わり、従業員だけで新年会を開く事になりました。

閉店時間は5時なので、どこの居酒屋も閉店しています。

仕方なく、自分達のカラオケ店のパーティールームで宴会をするのが恒例でした。

僕を含めて15名ほどでドンチャン騒ぎし、皆で酔い潰れて開店時間を迎え、早番シフト組はそのまま勤務に入ります。

僕がお昼頃に目を覚ますと

バイト「店長!○がいません!」

僕「寝てる間に家帰ったんじゃないか?」

バイト「時間になっても来ないから、携帯に電話しても電源切れてて、○ん家に電話したんすけど」

僕「家に帰ってないの?」

バイト「はい…」

これは事件だと思い、パーティールームで寝ている従業員を叩き起こして

店中を捜索しました。

しかし○はいません…

酔って帰る途中で事件に巻き込まれた可能性があると思い、警察にも通報しました。

しかし…

二日たっても○は見つかりませんでした。

警察からは家出の可能性が1番強いと連絡が入り、

親御さんは「絶対にそんな事はない!」と警察の予測に発狂寸前で抗議していました。

僕は重大な責任を感じながら、勤務時間外の全てを○の捜索に当てました。

カラオケ店の営業時間が終わり、○を捜索しに外に出ようとした瞬間…

ピリリリ!

僕の携帯が鳴りました。

なんと○からです!

僕「もしもし!?○か!?」

○「…」

僕「無断欠勤の事はいい!」

僕「○何してたんだ!?皆心配していたぞ!親御さんも!!」

○「…さむい」

僕「!?○今どこだ!?」

○「……暗い」

僕「おい!大丈夫か!?」

プツッ…

…ツーツーツー

僕は即座にリダイアルしましたが、…電波が届かない場所におられるか…のアナウンス。

…寒い?…暗い?

脳裏に開かずの間が出て来ました。

しかし、そんなはずはありません。

○が居なくなった日に、開かずの間を見に行きました。

僕がネジ止めでドアを封印したままです。

窓も無い密室で唯一の出入口は外から塞がれているのです。

…もし中に居たら?

僕は電話から異常な予感を感じました。

すぐに事務所に戻り、電動ドライバーで再び開かずの間のネジを外しました。

中はやはり真っ暗でしたが、奥の和風個室の扉が閉まっていました。

○はこの中にいる!

…と直感しました。

ドン!

僕「○!いるのか!?」

ドンドン!

僕「おい!○!!!」

半泣きになりながら扉を叩きました。

○からの返事はありません

僕は扉をよじ登り、中を見ました…

!!!

○が居ました!!!

便所の片隅でうずくまっていました!

中に飛び降り、○の顔をライトで照らしました。

○の両目の眼球は別々の方向に向き、

口からはヨダレが垂れています。

○「さむいくらいさむいくらい」

完全に正気を失った○を引きずり、外に出ました。

すぐに救急車を呼び、親御さんに連絡しました。

○はそのまま入院しました。

警察も事情聴取に店に来て、全従業員の話を聞きました。

後日、親御さんから店に連絡があり、○を辞めさせてほしいと言われました。

○がその後、回復したかどうかはわかりません。

親御さんから二度と店から関わらないで欲しいと、念をおされてしまったから…

この事件について…

社長から話を聞きました。

あの開かずの間のトイレは

カラオケ店になる前のスーパーの店長が首を吊って自殺した場所で

カラオケ店に改装する際に取り壊そうとした作業員が次々と事故に遭ったので

そのまま封印したという事

今現在、カラオケ店舗は潰れてドラッグストアになっていますが、

まだ開かずの間は残されていました。

中古物件に開かずの間があったなら

絶対に開けないで下さい。

怖い話投稿:ホラーテラー 店長さん  

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