短編2
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今もどこかで…

北国のとある柔道場での出来事。それは4年ほど前の晩夏の頃だった。

実際にはおおやけにならなかった事件だが、歴史ある道場だけにそのまちではかなりの大騒ぎとなり、数々の噂がまことしやかに飛び交った。

その事件とは、道場の指導者(当時24歳程)が稽古中に、門下生の女の子たちに長年にわたり痴漢行為を繰り返していたというもの。

「まさか稽古中にそんなこと」と、にわかに信じられないものだが、まぎれもなく現実に起こっていた。

被害者は小学校2年生から中学校3年生まで7人。すでにやめた女子にも被害者はいて、全部で11人にも上った。

痴漢行為の実態とは、寝技の指導中に股間に手を回し指先に力を入れる、抑え込むふりをして胸元に顏を埋める、立ち技の練習中にシャツを伸ばし胸元をのぞき込む、トレーニングと偽り無意味に体を密着させる、すれちがい様に尻などを触るなどなど…

しかし、これらの行為が発覚するのには数年を要した。

子どもたちにとって柔道の先生とは畏怖の念を抱く対象であること、仕返しの恐怖を抱いたこと、なにより大好きな柔道が続けられなくなるかもしれないという不安が女の子たちの口を重くしてしまっていた。

発覚後、信頼を裏切られた保護者たちと、事件の実態を認めようとしない道場側が対立。警察沙汰寸前まで行ったが、被害にあった女の子たちに配慮して事件化はされなかった。

加害者の指導者は混乱の最中、一切の謝罪も説明もなく、仕事も辞めて故郷に逃げ帰った。

本当に恐ろしいのはこれからで、その加害者の指導者は今、N県に移り住み、柔道の指導に携わっているということである。

加害者の一家と、道場経営者が親密な関係であったため、道場側が加害者に救いの手を差しのべ、新たな仕事先と指導者としての立場を与えたのであった。

このようなことはどこにでもある話だが、もし身近なところで少しでも心当たりのある方はご用心を。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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