これは親父が体験した話。
今年親父は還暦を迎えたばかりだ。
今から約三十年前、夫婦は私含めて3人の子供を養っていた。
その頃、親父の仕事が上手くいかず生活が苦しく母もパートをして家族を助けていた。
そんな矢先親父が若くして仕事中に心臓が停止してしまった。
直ぐに救急車で運ばれ、3日間手術が続いた。手術中親父は昏睡状態でこんな夢を見ていたらしい。
死者達が一本道をずらずらと歩いている。中には火傷をしている人や顔の半分が無い人、子供からお年寄りまで数え切れない人が歩いている。
親父もその中を歩いていた。ただ、怖いと思わなかったらしい。
一本道を歩いて行くと、途中で何万、何百万と道が別れている。決められたかのように自分だけの道を歩いて行く。
随分歩いただろうか、目の前に凄く大きな橋が見える。橋の下には、見たこともないくらい綺麗な川がある。(親父曰く三途の川)
その橋を渡って行くと橋の出口付近から、死んだ親父や母(親父の両親)、そして数知れない人達が手招きしをている。
その時凄い安堵感が生まれる。早くそっちに行きたい。両親に会える!
その喜びから少し足早になっていく。あと20メートルぐらいに来た。
その時、橋の入り口付近から自分の家族一同が、『お父さん帰ってきてー!!お父さんそっちいったらあかん!!』
泣きながら叫んでいるのが見える。
しかし橋を戻ろうとすると段々苦しくなってくる。
いっそ楽になりたい。
相変わらず死んだ人達は、帰ったら苦しい生活が待ってる。こっちに来いと手招きをしている。
その時兄が叫ぶ。『今まで悪さばかりしてた。でもお父さんを尊敬しています。いつもいつも私達の為に、休まず頑張るお父さんを尊敬しています。お父さんが居なくなれば誰が家族を支えるんですか!またこの家族に笑顔を下さい。帰ってきて下さい!』
その言葉を聞いた親父は、涙を流して苦しいが頑張って橋を戻っていく。家族と抱き合った瞬間目が覚めた。
手術が成功した。
後から聞いた話成功の確率10%以下だったらしい。奇跡だった。
それから三十年、親父の心臓にはペースメーカーが入っているが、酒は飲むし元気いっぱいだ。
今年還暦で仕事を退職する。来年からは私含め兄妹で親孝行しようと思う。
長文有り難うございます。文章下手ですみません。
怖い話投稿:ホラーテラー アトムさん
作者怖話