私には7才になる娘がいる。
何にでも興味を示す年頃。ある日アイロンをかけている私の背中に抱き付きながら、こう尋ねてきた。
「なんでアイロンするの?」
「くちゃくちゃの洋服のシワをなくすためなの。アイロンすると、シワがなくなるのよ」
ほらこのとおり!と、仕上がったシャツを娘に見せる。
すごいね~、すごいね~とはしゃぐ娘。そしてそのあとはもちろん、
「あたしもやってみたい!!」
アイロンは熱くて危ないから、もうちょっと大きくなってからしようね~、と娘をなだめる。
ぶーぶー言いながら、娘はお絵描きを始めた。我が娘ながら聞き分けはいい。
後日、実家から私の両親が孫の顔を見にやって来た。
孫や孫や~、と私の母が娘を可愛がっている間に、私はちょっと買い物に。
買い物から帰ってきたとたん、
「うわっ」
という父の叫び声。
何事かと思い、急いで叫び声の聞こえた部屋へ。
そこには顔の半分が真っ赤に火傷している父の姿があった。
そしてそのとなりにはアイロンを持って大泣きしている娘の姿が。
父の応急手当てをしながら母に何があったか尋ねると、
「〇〇〇(←娘の名前)がどうしてもアイロンをかけてみたいと言うから、アイロンの準備をしたらそのまま父さんの顔に押し付けた。あんまり急だったもんで、止められなかった」
何てことをと思いながらも、娘は泣きやまないし父の火傷はひどいしで、父を病院に連れて行って、両親にはそのまま帰ってもらった。
その日の夜。娘をひととおり叱ったあと、尋ねた。
「なんでじいちゃんの顔にアイロンつけたの!?」
「シワがなくなると思って」
そんな馬鹿な、私の娘はそんなことも分からなかったのか。
さらに叱ってやろうとした時。
「あたしも火傷しちゃうと思ったんだよ!!でも、ばあちゃんがやってみろって」
普段から仲の悪い私の両親。
子供の嘘だと信じたい。
怖い話投稿:ホラーテラー 生トマトさん
作者怖話