※このお話はグロ系の表現があります。一部の食品が食べられなくなる恐れがあります。自己責任で読んで下さい。
これは僕が小学生の頃の出来事です。
僕の家はアウトドア一家でした。
親父が釣り好きで、愛車はワゴン。キャンプ道具で我が家に無いものなんか、ありませんでした。
あ…せっかくなので僕の家族構成を紹介させて頂きますね。
父親(43)ちょっと偏屈
母親(42)パチンコ好き
僕(11)わんぱく坊主
弟(8)世渡り上手
…こんな感じです。
土曜日に学校が終わると、家族皆で親父のワゴン車にキャンプ道具を積み込み、
日が暮れない内に目的地でテントを張ります。
僕も弟もキャンプが大好きだったんですが、キャンプの時の親父は少し嫌いでした。(性格変わるんで)
テントを張りながら親父が叫びます。
親父「そっち持て!そっち!違う!このバカ!」
…口の悪い親父でした(いざという時は優しい)
僕も弟も慣れっこです。
お母さんなんかは親父の口が悪い時は、まるで何も聞こえないようなリアクションでした。
そして翌朝…
今回は周りが岩場に囲まれた入り江でのキャンプです。
ここは地元でも有名な釣りスポット…
僕と弟は少しがっかりしました。
親父か楽しむキャンプなら釣りスポット。
僕らが楽しむキャンプは海水浴場です。
弟がこっそり耳打ちします。
弟「…にーちゃん」
僕「…ん?」
弟「今回はハズレだね…」
僕「そうだね…」
当時、ジャイアンみたいな体型をしていた僕は、朝から夕方まで泳ぎを楽しめましたが、
喘息気味で痩せ型だった弟は、2時間も泳げば唇が紫色になっていました。
僕「まぁ、今日は寒いから調度良かったしょ?」
弟「うん!」
問題はここからです…
親父が船釣りの用意をしています。
部屋に訳の分からない釣りコンテストのトロフィーを沢山、飾ってある親父…
釣り道具の準備だけは、親父だけでやります…
「俺の子ならば釣りも好き」という親父の迷惑な信念の基、
手漕ぎボートで親子三人、仲良く出航!
僕は船酔いにめちゃくちゃ弱く、毎回嘔吐していました。
入り江の中で、親父は釣れそうなポイントを探し、ボートを停めました。
親父「よ〜し!釣るぞ〜」
…
…3時間後
ようやく魚が釣れ始めました。
僕の吐き気は限界を超えつつありました。
弟「にーちゃん!大丈夫?」
僕「とーちゃん…もう無理」
親父「なんだって?せっかく釣れだしたのに!」
いつもなら浜まで送ってくれるのですが…
その日の親父は、近くの岩場に僕を一時的に置いて行きました。(本当はいい親父なんですが)
浜に戻る時間が惜しかったらしいです。
僕が置いていかれた場所は絶壁の下の岩場です。
海面から30センチほど顔を出していた岩に座っていました。
僕と離れる時に弟が言ってた事を思い出し、一人で笑っていました。
弟「にーちゃんここに捨てられるの!?」
弟「にーちゃんが死んじゃうよ!!」
親父「にーちゃんはここで少し休むだけだ!」
ボートが離れる時には弟が絶叫!
弟「にいぃちゃあぁん!」
僕(…本当に可愛いな)
この時はまだ…
弟に僕以上の霊感がある事は知りませんでした。
…1時間ほど休んでいました。
だいぶ吐き気も治まり、そろそろ迎えに来て貰おうと
思ったその時…
ちゃぷ…
僕「え!?」
足元に海水がかかりました…
…満潮です。
小学生の僕にとっては恐ろしい出来事でした。
足場が無くなる!!
父親はこちらの異常に気づいていません!
入り江の海は海水浴場と違い、潮の流れがとても早く子供に泳げるはずはありません。
足元を洗い始めた波は、今にでも僕を沖に連れて行こうとしています!
恐怖を押し殺し、大声で助けを呼ぼうした瞬間!!
べちゃあ…
ブニョブニョしたモノが足に絡みつきました!
人の手です!!!
次の瞬間!
ザバーン!!
僕は海の中に引きずり込まれました!
薄れゆく意識の中…
海の中が真っ暗だった事だけが印象的でした。
…
目が覚めると、僕は砂浜に居ました…
僕の近くで親父が何か叫んでいます。
僕の足には、さっきの手がくっついて居ました。
親父はそれを引き剥がしていたのです…
不思議と恐怖は消えてました…
小学生って親が助けてくれている事で、こんな異常事態でも安心するものなんですね…
ようやく離れた水死体の一部であろうその腕からは、シャコが大量にくっついていました…
親父はそれを海に思い切り投げ捨てました。
何か怒りの言葉を言ってたと思います…
すぐに僕がなんで助かったか聞きました。
親父と弟は50メートルくらい離れていた場所で釣りをしていたんですが、
弟はずっと僕の方を見ていたそうです。
僕が海に引きずり込まれた時に
弟「にーちゃんが死んじゃうよ!」
と親父に言ったそうですが、またか…と親父は相手にしなかったそうです。
すると次の瞬間!
弟が僕の方に向かって、海に飛び込んだそうです!
潮の流れが早い海に…
服を着たまま…
泳いで僕を助けようと…
それで親父も全ての異常に気づきました。
僕は号泣しながら弟を抱きしめました…
僕「ありがとうな…ありがとうな…」
弟は天使の様な笑顔で答えました。
弟「にーちゃん!よかったね!」
怖い話投稿:ホラーテラー 店長番外編さん
作者怖話