■シリーズ1 2
…馬魂碑と馬頭観音の続きです。
注連縄の中で、もがき苦しむ二人を置いて…
携帯を取りに自分の車まで走りました。
部長に電話したのです…
部長は会社設立時から廃ホテル、廃ビル、病院に到るまでありとあらゆる怖い場所を警備していたツワモノでした。
半ばパニックになりながら「救急車呼んでいいですか!?」
と連呼していた僕をなだめながら言いました。
部長「その神社にはな神様の他に、馬魂碑と馬頭観音が奉られているんだ。」
部長「大丈夫だ。落ち着け!まだ死にはしないから言われた通りにやれ!」
…
まず、言われた通りにゴミが散乱していた石碑を
懐中電灯で照らし、一つ一つ調べていきました…
全て「記念碑」でした…
僕「部長!これ全部、記念碑です!」
部長「じゃ、次は馬魂碑と馬頭観音の近くに行け!」
僕「中は無理です!」
部長「中に入らなくていい!馬魂碑の説明が書いてある看板があるはずだから捜せ!」
部長「俺も詳しくは忘れたんだ」
…
落ち着いて捜すと…
ありました…
僕「ありましたよ!馬魂碑の説明!」
部長「よし、読み上げてくれ!」
…馬魂碑…
開拓時代に
苛酷な重労働で
死んだ馬達を労い
各農家が自宅の
庭先に大きな石を
置き馬魂碑として
供養していました。
この馬魂碑は
各農家の馬魂碑を
集め、明治○年に
作られました。
隣の祠は馬頭観音で
馬達の成仏を願い
○寺より昭和○年に
寄贈されたものです。
…
部長「…集められた馬魂碑は何処にあるかわかるか?」
僕「…」
辺りを見ました…
僕「この看板の横に少しだけ積んでありますけど、普通の大きい石ですよ?」
部長「それだ!なんかイタズラされてないか?」
僕「!!」
あれだ…
出店の業者が…
ゴミ置場のブルーシートの重しに
使っていた石…
僕は部長の指示通り、重しに使われていた石を全て回収しました…
それらを石の山に戻し、手をあわせました。
部長「よし、もう注連縄の中に入れるぞ!」
…
部長の言葉通り、中に入れました…
しかし、中にいる三人はぴくりとも動きません…
生きてはいる様ですが、意識がありません…
僕「救急車呼んでいいですか!?」
部長「バカヤロー!死んじまうぞ!いいか!絶対に境内から外に出るんじゃない!」
部長「神主さんには俺から連絡する!俺も今から行くから待っていろ!」
…
部長が到着する頃には
すっかり辺りは明るくなっていました…
それから1時間ほどしてから初老の神主さんも到着しました。
部長が神主さんに深々と頭を下げました。
神主さん「いえいえ…お詫び申し上げるのコチラの方です。」
部長と神主さんが何か話した後、三人を建物の中に運びました…
その先は僕と部長は入れないようで、別室で待機していました…
僕「…部長」
部長「なんだ?」
僕「馬達の魂が三人をあんな目に?」
部長「…そうだ」
僕「僕達を祟り殺そうとしたんですか?」
部長「…違う」
僕「いや、本当に死ぬ程の激痛を味わったんですよ!?」
部長「それは馬達の痛みだ」
僕「…?」
部長「馬達が死ぬまで働いたと看板に書いてあったろ」
僕「…ええ」
部長「人間じゃあるまいし、馬が自分の意思で過労死するまで働くか?」
僕「…いえ」
部長「働かせたんだよ!人間が!馬が死ぬまでな!」
僕「…!」
部長「あそこに眠る馬達の魂はな、痛みと絶望しか知らないんだ」
部長「そんな魂達に、見境があると思うか?」
僕「…いえ」
部長「お前達を殺そうとしたんじゃなく、お前達が馬達の痛みと絶望に触れただけだよ」
部長「ちなみにな…あの馬魂碑はこの神社が出来る前からあったんだ」
部長「今回みたいな事が、辺りの地域に広がってな…」
部長「それを鎮める為に後から神社を建てたんだ」
部長「しかし、それでも止められなかった!」
部長「そして今度は仏さんの力を借りて、ようやく馬達の魂も鎮まったんだ」
僕「…マジですか」
部長「まぁ、境内に居たから死なずに済んで良かったよ」
部長「ここの神様の加護だな」
僕「あの…なんで外に出たら死ぬって…」
部長「ん?俺が10年前に経験したから」
部長「境内から出た奴は救急車の中で狂い死んだよ」
部長「俺は神主さんに助けて貰ったんだけどな」
…
僕「仕事辞めていいですか?」
部長「うん?あのな〜」
部長「今日見た小さな馬魂碑な」
部長「この地域だけでも全然足りないんだよ」
部長「開拓時代に死んだ馬があんなに少ない訳無いだろう」
部長「残りはこの街中に放置されてんだ。何処にも逃げ場は無いんだよ」
…
大き目の石を見かけても…
決して近寄らないで下さい。
■シリーズ1 2
怖い話投稿:ホラーテラー 店長番外編さん
作者怖話