※このお話では、人間の怖い話です。あまり怖くないのですが…
僕が警備員のアルバイトをしていた時の出来事です。
今回は、ベテランさんと二人で道路工事の警備です。
ベテランさんを警備会社で拾い、二人で現場に行きました。(ベテランさんは車無し)
街中からかなり離れた場所での工事です。
もはや都会の面影はなく、半径数キロに建物はありません。道路の先には大きな墓地があるだけです。
着工から終了まで一ヶ月の現場でした。
工事内容は、道路の舗装(アスファルト)を剥がし、下の土を新しいモノに入れ替えて、再度、舗装する…
僕(…こんな所の道路に…税金の無駄遣いだ)
…しかし、初めて見る工事だったので、興味津々で見てました。
矢印板とカラーコーンと工事中の看板で、道路を囲いスタートです。
まずはカッター屋さんが来ます。2トントラックで大きな水槽を積んでいます。
回転ノコギリで、慣れた手つきで舗装に切り目を入れていきます。同時に水をノコギリにかけ、熱でダメにならないようにしていました。
次にショベルカーで、切れ込みの入った場所からどんどん舗装を剥がしていきます。
剥がれていった場所から、他のショベルカーで掘り起こし、ダンプに載せます。
掘り起こした古い土やジャリは「残土」と呼ばれ、専用の処理業者までダンプが運びます。
…どうやら、20年以上も前の道路らしく、工事は見ていても飽きませんでした。
道路の下は
舗装(アスファルト)
砕石(ジャリ)
土(新しい土)
と層になっていました。
…この砕石を新しい黒いモノを使う事で、地盤沈下しにくくより頑丈な道路になるんだとか
僕(後、五年は大丈夫だと思うけど…)
現場の作業員さんは全員、日雇いです。
この工事会社は小さいところで
社長…現場監督
専務…ショベルカー
常務…ショベルカー
部長や課長や平社員はいません。
朝の9時から夕方5時まで作業は続きます。
仕事が終わり、帰りの車の中でベテランさんと話しました。
ベテラン「新人くんさぁ、俺達の仕事は、外から人や車が工事現場に入ってくるのを防ぐ警備なんだから、あまり工事ばかり見てちゃダメだよ!」
僕「すいません!珍しかったので…」
警備会社に到着すると、部長が待っていました。
部長「あ〜…お二人さん。悪いんだけど、明日同じ現場で夜9時から0時までやってくれないかな?」
ベテラン「…すいません、夜はちょっと…」
僕「夜ですか、まぁ短いんで良いですよ」
…結局、僕一人で翌日の警備につきました。
…
現場に着きました。
辺りはとても静かで、車一つ通りません。
工事会社の社長と専務と常務が居ました…
僕「あれ?作業員さんは来てないんですか?」
社長「うん?あぁ…今日は俺達三人でやるから…」
…変だな
と、違和感を覚えつつ
工事の用意をしました。
奇妙な緊張感が現場を包みます…
僕(今日は何やるんだろ…)
僕は現場の作業をチラチラ見ていました…
…
…ショベルカー2台で残土を掘り返しているだけでした…
脳裏にベテランさんの言葉が過ぎったその時…
…?
…!?
ショベルカーが…
掘り出した爪から…
服を着た人骨が!!!
その瞬間!!
ショベルカーを運転している専務と目が合いました!
心臓が太鼓のように鼓動を鳴らしました!
僕はすぐに振り向き、見てないフリをしました…
…
僕(ヤバイヤバイヤバイ!)
工事現場に背を向け、外を見ていたフリをする僕は、バレていないか、背中に全神経を集中し、聞き耳を立てていました…
…ブロロロ
2台のショベルカーのエンジン音がします。
…キュンキュンキュン…
…!!
エンジン音が止まりました。
後ろで話し声が聞こえます…
そして…
ザッザッザッ…
コチラに足音が近づいて来ます!!
!
僕(ヤバイ!バレた!)
絶体絶命かと思ったその時!
正面から車が近いて来ました!
僕(助けを求めよう!!)
と、思ったその時…
社長が肩を叩きました!!
社長「あれ、うちのダンプだから…中に入れてあげてね」
僕「は…はい」
…見た事もない真っ黒のダンプでした。
ショベルカーがダンプに残土を積み、ダンプの運転手は社長からお金を受け取って、何処かへ走って行きました。
僕の心臓はずっと高鳴ったままでした。
…0時になりました。
社長「おーい、兄ちゃん!今日は終わりだ!片付けてくれ!」
…僕がカラーコーン等を片付けていると
専務「今日は時間、短くて商売にならんだろ?」
と、一万円を手渡しました。
社長「ごめんな〜、こんな夜遅くに仕事させて」
…僕はこの言葉にホッとしました。ほのぼのした雰囲気の中…
(さっきのは目の錯覚だったのかな?)
…と思った矢先です。
社長「飲みに行かないか?」
…?
僕「え?今からですか?」
専務「いい所連れて行ってやる」
僕「いや〜、お金無いんで」
社長「おごってやるよ」
僕「僕あまりお酒飲めないんで…」
常務「こらぁ!お前社長に恥かかすんかい!」
…再び戦慄が走りました。
三人の目が座っています…
僕「すいません!お先に失礼します!」
…走って車に乗り込み、発進させました。
三人の横を通り過ぎました。
…この時の三人が僕を睨む顔が、今だに忘れられません。
すぐに携帯で部長に連絡しました。
今日の出来事を全て話しました…
…部長の話です。
こういうのは良くある事。
○×興業とか×組など、少人数でやってる会社は特に
この会社が格安で国の仕事を受注して、今回の道路工事をしていた。
来年の選挙で民主党が政権をとると、今後いつ工事出来るか分からないので、今年に掘り返したんだろう。
最後に…
部長「お前、本当に飲みに行かなくて良かったな!」
怖い話投稿:ホラーテラー 店長番外編さん
作者怖話