中編5
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禁断の地 完

■シリーズ1 2 3

…「禁断の地 その2」の続きです。

僕「みんな、落ち着いて!教えてくれ!トンネルの中で、前の人の両肩に手を乗せたよね?」

僕「誰から始めたの?」

男性スタッフ「え、後ろから来たからマネして…」

女性スタッフ「私も…」

全員が「後ろから」と答えました。

…あれはあの子から始まったって事か…

…テントの中の誰もが、無言になりました。

僕「先に行った連中を連れ戻さないと。誰か一緒に来てくれないか?」

その言葉に、テントにいる全員が一斉に僕を見ました。

…!

一瞬、視界が灰色に染まり

コチラに顔を向けている全員が…

目を開けたまま死んでいる様な表情に見えました…

…ムンクの叫びの様に口を開けて…

僕「…う!」

…キイィイィイ

…頭の中でガラスを引っ掻いた様な音が鳴り響きました。

…店長

スタッフ「店長!大丈夫ですか?」

僕「あ…あれ?」

…我に返ると、心配そうに僕に声をかけるスタッフ達に囲まれていました。

…今のは何だったんだ。

男性スタッフ「俺も一緒に行きます!」

僕「あぁ…うん、行こうか」

…テントから出ると、二人で僕の車に向かいました。

外は完全に夜です…

月明かりが蒼白く砂浜を照らしています。

海は静かに波打っていました。

上空は風の流れが強いのでしょうか。

黒く、小さな雲が見た事がない速さで流れていました。

…突然!足に痛みが走りました。

…痛っ!

男性スタッフ「!?…大丈夫ですか?」

僕「…大丈夫…足を何かに刺されたみたいだ」

…車に乗り込み、エンジンをかけました。

…。

男性スタッフ「店長…気をつけて運転してください。」

僕「…?…なんで?」

男性スタッフ「さっき、目の錯覚かも知れないんですけど、店長…凄い顔してた様に見えました。」

僕「…凄い顔?」

男性スタッフ「なんかホラー映画に出て来そうな顔で…死相かと思いましたよ」

…!

…僕がハッとした顔になったのを察したのでしょうか、男性スタッフはそれ以上は喋りませんでした。

…とてつもない不吉な予感を感じながら、○岬へと車を走らせました。

…海岸通を走っていると、いくつかの小さなトンネルを通り抜けます。

その全てのトンネルの入り口の上に、小さな赤い鳥居がありました…

トンネルを通り抜ける度に冷や汗が出て来ます…

徐々に心臓が高鳴って行くのがわかりました…

…はぁ…はぁ…

…?

隣のスタッフから苦しそうな息遣いが聞こえて来ました。

僕「おい!大丈夫か!?」

男性スタッフ「はぁ…はぁ…なんか…苦しいです」

…!

さっきまで…

肩にあったはずの…

手形のアザが…!

彼の首を絞めるかの様に、アザが移動しています!!

…!

僕もTシャツの首元を引っ張り、バックミラーで確認しました。

僕のアザも少しずつ、首の方へと移動しています…

これは悪い夢か…?

あまりの異常事態…

…風邪をひいて高熱を出した時の様に、目眩で世界がぐるぐると回り始めました。

……

…ズキン

僕「痛っ!」

…ついさっき何かに刺された足の痛みで気がつきました。

…ここは…

…どうやら朦朧としながらも、○岬の駐車場に着いていた様です。

すぐ隣の男性スタッフに視線を向けました…

…彼は口から泡を吹きながら、失神していました。

僕「おい!大丈夫か?」

彼を揺さぶりましたが、起きる様子はありません…

彼の首についたアザは、どす黒い色に変わっていました。

…!

…僕のアザは!?

バックミラーで確認すると、アザはまだ首についていました。

彼のアザと比べると、まだ色が薄い様でした。

しかし…

どんどん、呼吸が苦しくなっていきます。あまり時間は無い様です…

…先に来た連中は?

よろめきながら外に出ると、彼らの車が目に止まりました。

中を見ると、同じ様にスタッフ達が失神していました。

…救急車を呼ばないと

…?

…あれ?

携帯の電波状況の表示は、確かに「良好」でした…

しかし、119番にかけようとしても、ボタンが効きません。

圏外の時の様な反応でした。

…なんだよこれ。

……。

そういえば「あの子」は…?

先に来た連中の車を捜しました。

…が、いません…

僕は岬の先端に視線を向けました…

…!

…そこには

月明かりに照らし出された「異形の何か」が居ました!

…人の型をしながらも、時おり液体の様に型を変えています。

…もがき苦しんでいる様にも、踊り狂っている様にも見えました。

…ズキン!

僕「…っ!」

足の痛みと共に…

…「アレ」に近付かなければならない。

僕の中で直感しました。

…心臓が張り裂けそうな恐怖の中

僕は意を決して

「異形の何か」に近付いて行きます…

…すると

……!

女性の悲鳴が聞こえて来ました!

それはあの「異形の何か」からでした!

「アレ」は「あの子」だ!!

僕は走り出しました!

そして…

見てしまったのです…

それは「あの子」でした。

夥しい数の…

フナムシに全身を襲われ

まるで炎に包まれた人間の様に

もがき苦しんでいました…

…僕は一瞬、気を失いそうになりました。

…ズキン!足の痛みが僕に正常な判断を戻してくれました。

彼女に纏わり付く夥しい数のフナムシを素手で払いのけます。

…!…!…!

その度に手に痛みが走ります!

この足と同じ痛みです。

ある程度のフナムシを払い落とし、彼女を抱えて車まで走りました。

…スタッフ達が目を覚ましていました。

僕「…誰か…救急車を」

最後の気力を振り絞り、唖然とするスタッフ達にそう伝えると、僕は意識を失いました…

目を覚ますと、病院のベッドの上でした。

両手と足は二倍くらいに晴れ上がっています。

病室の鏡で首のアザが消えているのを確認し、ナースコールを押しました。

ナース「どうされました?」

僕「あの…一緒に運ばれた女の子がいると思うんですが…」

ナース「大丈夫…命に別状はないですよ」

僕「会いに行ってもいいですか?」

ナース「…全身が腫れて、高熱が出てるの。面会は出来ません。」

僕「…そうですか…」

僕はその日のうちに退院しました。

その後、あの子が店に出勤する事はありませんでした。

…数日後

スタッフ「…店長」

スタッフが深刻な面持ちで、何かを持ってきました。

○入り江で記念撮影をした時の写真でした…

僕「…これは」

そこに写るはずだった

背景の綺麗な海には…

巨大な女性の顔が

こちらを睨んでいるように写っていました…

長いお話を読んで頂き、本当にありがとうございました。

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怖い話投稿:ホラーテラー 店長さん  

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