中編3
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般若 中

…「般若 上」の続きです。

※ここからは、かなり不快感のある表現も出て来きますのでご容赦を…

…周りの女性スタッフ達になだめられ、気を取り直したKさんは再び重い口を開きました。

周囲からは…

「もうやめなよ!」

「無理するなって!」

…と、制止する声が飛び交いましたが、

Kさんは何かにとり憑かれたかの様に話し始めました。

…我慢の限界に達した父親が、鬼の形相でお婆ちゃんの部屋に向かって行きます。

…母親は、父親が何をしようとしているのかを、その形相から感じとり

母親「あなたぁ!!お願いだから!それだけはやめてぇ!!」

…と、父親の足にしがみつきました。

…父親は足にしがみつく母親を無言で蹴り飛ばしました。

母親は蹴り飛ばされながらも、何度も父親の足にしがみつき、父親を止めようとしました…

母親「お願い!お願いだから堪忍して!!」

…Kさんは、優しかった父親の突然の豹変に、

恐怖で身体が動かなくなったそうです…

…バタン!

母親の制止も虚しく、父親がお婆ちゃんの部屋に入っていきました…

…ガチャ!

…部屋の中から父親が鍵を閉めました。

母親は鍵の閉まったドアノブを引っ張りながら、

狂った様に泣き叫んでいました。

母親「お願い!やめて!やめてぇ!!」

…部屋の中からは

Kさんが一度も聞いた事が無かった父親の怒号が聞こえてきます…

…そして

人間のモノとは思えない…

お婆ちゃんの悲鳴が聞こえてきます。

部屋中の物が壊れる音…

時おり地震かと思えるような激しい振動…

母親の絶叫…

父親の怒鳴り声…

お婆ちゃんの悲鳴…

物が壊れる音…

…繰り返される悪夢は数時間にも及びました。

Kさんは金縛りの様に…

立ち尽くしたまま、一歩も動けず泣いていたそうです。

…自分の一言で招いてしまったあまりの恐怖に…

…物音一つしなくなったお婆ちゃんの部屋から父親が出て来きました。

父親の両手は血で真っ赤に染まっていました。

父親は無言で洗面所に行き、両手を洗い無言のまま自分の部屋に入って行きました…

…。

母親がお婆ちゃんの部屋に駆け込みました。

母親「ぁあぁあ〜!お母さん!ごめんね!ごめんなさい!ごめんなさい!お母さ〜ん!」

母親が泣き叫けんでいます。Kさんも泣きながら部屋に入っていきました…

…Kさんの視界に

…お婆ちゃんの姿がありました…

…虚ろな目は母親を見ていませんでした…

…頭と、口と鼻から血を出して…

…お婆ちゃんはぐったりしています…

部屋中が壊れた物で散乱し…

…お婆ちゃんの全身はアザだらけでした。

…しかし

…お婆ちゃんは生きていました。

Kさんもお婆ちゃんに抱きつき、泣きながら謝ったそうです。

お婆ちゃんの手当てをし、母親とKさんはお婆ちゃんの部屋を片付けていました。

二人とも泣きながら…

部屋を半分くらい片付けた所で、Kさんの耳にブツブツと喋り声が聞こえたそうです。

…お婆ちゃん?

Kさんは振り向きましたが、お婆ちゃんは寝ています。

…?

それは母親から聞こえてきます。

…お母さん?

Kさんは母親の顔を覗き込みました。

…!

そこには…

「般若」の顔をした…

母親がいました…

…殺してやる

…殺してやる

…殺してやる

この言葉だけを繰り返しながら、母親はお婆ちゃんの血がついた畳を拭いていました。

…翌朝、目を覚ましたKさんが、お茶の間に行くと

母親が台所で朝ごはんを作っていました。

父親はテーブルで新聞を読んでいます。

そこにはKさんの家族の日常の光景がありました。

…。

…お婆ちゃんの部屋に行くと

…やはりお婆ちゃんは痛々しい程の怪我をし、寝たままでした。

「昨日の出来事は悪い夢かもしれない」というKさんの願望は砕け散りました。

…違和感が漂う生活がしばらく続きました。

あの日以来…

お婆ちゃんは喋れなくなっていたそうです。

そして…

…ある夜

家族の目を盗み…

お婆ちゃんは家出をしました…

…それは

凍てつく寒さの…

吹雪の夜でした…

…続きます。

怖い話投稿:ホラーテラー 店長さん  

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