…「般若 中」の続きです。
…Kさんの話に、何人かのスタッフ達が泣いていました。
皆、Kさんが泣き崩れた意味を理解していました。
…。
そして話は続きます…
…猛吹雪の夜でした…
真っ先に異常に気がついたのが、母親でした。
母親「お母さん!どこなの!」
…返事がありません。
Kさんと母親は家中を捜しましたが、お婆ちゃんは居ませんでした…
…玄関にはお婆ちゃんの靴があります。
残念なことに…
…玄関先には外に向かう足跡がありました。
…裸足の足跡です。
Kさんと母親は急いでコートを着込み、外へお婆ちゃんを捜しに行きました。
視界が真っ白で5メートル先も見えない吹雪の中…
警察と町内会の人達に協力して貰い、捜索は朝まで続けられました。
捜索に参加していた誰もが「この寒さと吹雪では助からない」と言っていたそうです。
夜が明ける頃に警察の無線で連絡がありました。
…お婆ちゃんが見つかった…
警察は「落ち着いて聞いてください…」と半狂乱の母親をなだめながら話をしていました。
…お婆ちゃんらしき女性が死亡してそうです…
…まず、身内による身元の確認が必要だと言う事で、母親とKさんはパトカーに乗り、遺体発見現場に向かいました。
パトカーが着いた場所で、母親とKさんは泣き崩れました。
そこは…
お婆ちゃんが住んでいた…
市営住宅でした…
お婆ちゃんは痴呆になりながら…
亡きお爺ちゃんとの思い出の場所に…
帰ろうとしていたのです…
…後日
お婆ちゃんのお葬式が行われました。
もちろん父親は出席しませんでした。(形式上は仕事の為)
親戚達(母親方の)が集まり、皆が悲しんで涙を流していました…
不思議とKさんの母親は無表情だったそうです…
…火葬場に着き、お婆ちゃんの遺体は焼かれました。
母親は棺桶が納められた釜の前から離れる事なく、
その先に、お婆ちゃんが焼かれているであろう壁を見つめて居ました。
それはお婆ちゃんが遺骨になるまで続きました…
Kさんはその時、母親の後ろ姿に、燃え上がる様な憎悪や怨念を感じたそうです。
…それから数日後
深夜にKさんは目を覚ましました。
…懐かしい匂いと
…優しい手つき
…!
…亡くなったお婆ちゃんが、ベッドの横に座りKさんの頭を撫でて居ました…
…Kさんの身体は動きませんでしたが、恐怖心は無かったそうです…
顔をお婆ちゃんに向け、Kさんは涙を流しました…
K「…お婆ちゃん…ごめんなさい…」
まるで元気だった頃のお婆ちゃんだったそうです…
お婆ちゃん「…Kちゃん…迷惑かけたねぇ…」
…お婆ちゃんはそう言いながらにっこりと微笑み、消えていきました。
…!
…お婆ちゃん!!
…Kさんに元へ、お婆ちゃんが来てくれたのです…
…Kさんの後悔や罪悪感を軽くする為に…
K「お母さん!」
…あまり嬉しさにそのまま飛び起き、母親に伝えに行きました。
…が、いません。
すると…
ブツブツと何かを喋っている声が聞こえました…
…父親の寝室からでした…
…そこで
見てしまったそうです…
母親が…寝ている父親の頭の上で囁いていました…
…恐ろしい
…般若の形相で…
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
…父親の手足が痙攣していきました…
…。
…翌朝、父親は脳梗塞で病院に運ばれました…
意識はあるものの、ほぼ全身の自由が利かなくなったそうです。
…。
…自業自得だよね。
…うんうん、死なずに済んだだけラッキーだよ。
スタッフ達が次々と感想を喋り出します。
「でもお父さん障害持ってしまって大変じゃない?」
…誰かが質問しました。
Kさんは続けて話してくれました。
同じ夜に…
お婆ちゃんは母親に、父親に呪いをかけるよう言われたそうです。
「あの男はお前達を必ず不幸にするから」と…
そして「後の面倒は全て自分が見る…」と
…。
スタッフ「どういう事?」
彼女は屈託のない笑顔でクスクス笑いながら答えました…
K「お父さんねぇ…
あれからずっと…
お婆ちゃんの部屋に
閉じ込めているの…
本当、自業自得よね…」
…Kさんは25歳です。
彼女の顔が…
一瞬…
「般若」に見えました…
…長い文章を読んで頂き、ありがとうございました。
怖い話投稿:ホラーテラー 店長さん
作者怖話