…「終わらない恐怖」の続きです。
産婦人科から帰ってきた妹は、自分の部屋で鏡を見ていました。
少し大きくなった自分のお腹を摩りながら…
…哀しみ、恐怖、絶望、Aさん、赤ちゃん…
彼女の中で、様々な想いが交差していきました。
姉「あんた…それ…噂の呪いじゃないよね…?」
妹「…お姉ちゃん…何で知ってるの…?」
この頃、Aさんの「呪いの胎児」の噂は、女子高の枠から溢れ出し、爆発的に広まっていたのです。
…話はAさんのお葬式に遡ります。
姉妹と何人かの同級生が、Aさんのお葬式に出席しました。
会場は沢山の泣き声で満たされて居ました。
Aさんの両親は、最後までお見舞いをしてくれた妹に何度も頭を下げていました。
お葬式の出席者が席に正座し、お坊さんがお経を唱え始めました。
始めに異変に気づいたのが、隣に座った姉でした。
妹が苦しそうに眉間にシワを寄せ、お腹を抱えています。
妹「…っ」
姉「…?」
妹「うぅ…」
姉「ちょっと…大丈夫?」
妹「いやあぁ!!」
突然、妹が悲鳴をあげ白目を剥いて仰向けで倒れました。
お坊さんのお経は中断され、会場は騒然となりました。
妹は痙攣を起こし、口から泡を吹いていました。
その時、彼女のお腹の中で、「何か」が暴れているのを姉は見ていました。
…話を戻します。
姉妹はこの「想像妊娠」が、普通ではない事を両親に相談しました。
妹の少し膨らんだお腹を見て、両親はすぐに異常である事を悟ってくれました。
翌日…
家族全員で、近所のお寺に行きました。
住職にいきさつを話し、妹のお腹の中に居る「モノ」を供養して貰おうとしました。
住職は妹を見た瞬間に涙を流しました。
住職「恐ろしくも哀しいモノに憑かれましたね…」
全てを説明し終えた後…
住職「…私程度の力でどうにか出来るかわかりませんが、やってみましょう…」
…と、妹を座布団に座らせ、家族三人を妹の後ろに並んで座らせました。
住職はお葬式の衣裳に着替え、妹の目の前に座りました。
住職がお経を唱えようとした時でした。
住職は驚愕の表情を見せ、手を震わせています。どうやら妹の顔から目が逸らせないようでした。
家族もその光景に驚きました。
姉は席を立ち、妹の顔を覗き込みました。
そこには、見た事がないような恐ろしい形相で、住職を睨みつける妹が居ました。
…住職は供養を中断し、家族に伝えました。
住職「…残念ながら、私はお力になれません。×県の〇寺に古くから水子を供養する観音様がおります。御仏のお力をお借りすると良いでしょう。」
…翌日、家族は飛行機に乗り、住職が教えてくれた〇寺に向かいました。
飛行機の中で、妹を心配した姉が尋ねます。
姉「あんた、本当に何も覚えてないの?」
妹「うん…本当に私が睨んでいたの?」
…そして目的地の〇寺に到着しました。
そこには、足元に無数の花束やお菓子が置いてある、高さ3メートル程の観音像がありました。名前はわかりませんが、隣の古い石碑には「水子供養」の文字が刻まれています。
田舎の小さなお寺で、住職は留守にしているようでした。
仕方なく、妹を真ん中にし家族全員で観音像の前で手をあわせました。
…ぽたっ
妹「…え?」
妹が目を開け、観音像を見上げました。
…たたた
観音像の両目から、血の涙が降り注ぎました。
次の瞬間…
観音像の首が折れ…
ゴロンと地面に転がり落ちました。
…家族全員が言葉を失う中、妹は観音像の血の涙で真っ赤に濡れた顔を振り向かせ、静かに言いました。
妹「お父さん…お母さん…お姉ちゃん…」
妹「…わたし…もうダメみたいだね…」
彼女は涙を浮かべ、微かに震えながら微笑んでいました。
…重苦しい雰囲気の中、家族は飛行機に乗り、自宅へと帰りました。
翌日、妹の強い要望で普段通り学校に通う事になりました。
妹は「自分の人生が短いなら、最後まで普通に暮らしたい」と言ったそうです。
この時…彼女の唯一の望みが、既に存在していなかった事に
家族の誰一人として気づいてなかったのです。
Aさんのお葬式の出来事。
妹が誰にも「胎児の呪い」の噂を広めなかった事。
このタイミングでの数日間の病欠。
その頃…学校中で噂が噂を呼び、妹が「胎児の呪い」の中心となっていました。
そして、噂という巨大な悪意は、更なる負の連鎖反応を起こす…
凄惨な「イジメ」へと発展して行きました。
…続きます。
怖い話投稿:ホラーテラー 店長さん
作者怖話