そこは、暗くて冷たかった…
私は何故ここにいるのだろう。
ふと気づくと、頬に涙が伝っていた。
この涙は何なのだろう。
いくら考えても、私には分からなかった…
次に目を覚ましたときに目に映ったのは、病室の天井だった。
そばには、両親が静かに座っていた。
その様子は、私の口から何か言葉が出てくるのを待っているかのようにも感じられた。
しかし不思議と、私は何も言葉を発することが出来ないでいた。
そんな私の手を、両親は黙ってそっと握ってくれた。
「何か、覚えてる?」
母が私に尋ねてきた。
私は何も覚えていなかった…
それを知ると、両親は顔を見合わせ、なんとも微妙な表情をしていた。
何だか分からず戸惑うばかりの私に、両親は説明してくれた。
私が昨日、自分の部屋で首を吊り自殺未遂を起こしたことを…
全く覚えていなかった…
両親は説明しながら、こらえきれず涙を流していた。
よほどショックを隠しきれないのか、
「ごめんね…ごめんね…」
と、母は私の手を強く握り、泣きじゃくっていた。
私は、その時ふと気づいた。
母の手に痛々しい引っ掻き傷のようなものがあることに。
謝りながら涙を流し私を見つめる母の瞳。
その奥には、無数の感情が複雑に渦巻いているように見えた…
怖い話投稿:ホラーテラー geniusさん
作者怖話