中編4
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開かれた奈落

これから兄から聞いた話をお話します

僕の兄は以前お話した「邪霊の巣窟」の事件がきっかけで退魔士関係の道に進んで職業柄、様々な事件に遭遇しており、色々な話を聞かせてもらっています。

これから話す事件は自分が聞いた話の中で最も恐ろしく、印象に残った話です。尚、聞いた話ですので自分の想像による部分もありますのでご容赦下さい。

「俺、少し大きな仕事を任されたんだ。」

家に遊びに来ていた兄が自分が仕事である島に行く事を告げた。その島は人口こそ多くないけどシーズン中には観光客が結構訪れるらしい。

しかしここ数年、島民や観光客が突然倒れて意識不明になったり、言い方が悪いですが頭がおかしくなった方が多発しているみたいで中には霊を見たという人もいるとか。

一応霊能者の方に見てもらったらしいのですが手に負えないとかで兄達の所へ話がまわってきた、という事でした。

「まだ具体的に何も解ってないから不安だが・・まぁ、やっと大きな仕事を任せられる様になったんだから頑張らなきゃな。で、出発前に一応お前に挨拶をしとこうと思ってな。」

兄は仕事前には必ず家に寄る、しかし挨拶とは建前で本当は娘のEに会いに来ている。Eはあの事件で神様の加護を直接受けているに等しいらしく、仕事に行く際に少しでもその恩恵を受けようという魂胆らしいのです。

しかし残念ながらEは遊びに行っおり不在で兄は残念がりながら帰ろうとした時タイミング良くEが帰ってきました。

そして兄を見るなり

「おじさん、これあげる。いつも遊んでる子がおじさんにこれを持たせてってお願いしてきたの」

娘が差し出したのは見間違う筈がないあの神社の事件で自分達が持っていたあのお守りでした。

妻のAが顔色を変えながら娘を問いだしました。

「これを本当にその子が持ってたの?その子はどんな子で何処の子なの?」

「知らない。名前教えてくれないし。いつも気付いたらいて遊んでいると気が付いたらいないの。初めて会った時もEにごめんなさいって謝ってばかりでずっと守るからって言ってた」

それを聞いた自分達はその子が何者なのか何となく解りました。

そして兄が関わる事件がただ事でないのだと悟りました。

兄はEに貰ったお守りを大事そうにしまい、一応本山に連絡してから出発すると言って帰りました。

数日後、兄は二名の付き人さんと共に事件の起こっている島へ出発していきました。

Eからお守りを受け取った兄は一応本山に連絡をして出発しました。

島に向かう最中、兄はかなり不安だったそうです。

(もしかして自分では手に負えないとんでもない事件なのか?)

と。かなり悩んでいたみたいです。そして遂にその島に到着しました。

最初の印象は特に何もなかったらしいです。邪悪なものは感じなかったと言っていました。そして依頼者(島の責任者たち)と会い、簡単ではありますが島を案内された後に宿泊先に案内されました。

正直、兄はかなり拍子抜けしました。悪霊等の気配は全く感じられず、せいぜい浮遊霊がちらほらしている低度で特に害になるようなものも無かった。

(もしかしたら偶然不幸事が重なってそこにたまたま浮遊霊の目撃情報があっただけであのお守りもこんな仕事しているから心配でEを通じてくれただけかもしれないなぁ)

そう思いつつ明日もう少し調べてからまた考えようと決めてその日はもう休む事にしました。

しばらくして、時間は午前2時頃。突然周りの空気が変わりました。兄達はびっくりして跳び起きて辺りを見回しました。兄達の周りだけじゃなく島全体の空気が変わったようでした。

あの神社の様な邪気とか悪意とは全く異質なもの。

凄く冷たくてとても凶々しい・・・。兄は何かの気配を感じて窓から外をみると・・・・・。

「それ」はいました。

その姿を見て兄達は驚愕しました。今まで見たどんな霊とも違う正に異質な姿。衣服を着ておらず全身が赤い。赤いオーラの様なものに包まれているみたいでした。

付き人達は顔色を変えガタガタと震えていました。兄も気分が悪くなり吐きそうな感覚に襲われました。

(そうか、これが原因か。こんな気を少しでも霊感ある人が浴び続けたらどうかなってしまう。)

そう確信してあの霊を見るとこちらに近寄って来ていました。それだけではありません。数が増えている、いえ増え続けているのです。その増え方を見て兄は恐怖で泣きそうになったと語りました。

衣服を着てない赤い亡霊が地面からはい出る様に出て来ていたそうです。まるで映画にあるゾンビの様に。 兄は恐怖で震えながらも必死であのお守りを掴み経を唱えました。我にかえった付き人達も一緒に唱え始めましたが・・・・。

「まるで効いてない。」

兄はそう呟きました。

そいつらは経をまるでものともせずに近寄って来ていました。しかし部屋には入って来ないのはやはりお守りのおかげだったのでしょう。しばらくそんな状態が続きましたがやがて朝日が昇り始めて奴らはそのまま消えていきました。

とてつもない疲労感に襲われながら兄は本山への連絡とこの島の本格的な調査を決意しました。

すみませんまだ続きます。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん

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