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短編2
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地獄虫

あれは私が高校三年生の時のことだ

私はおばあちゃんの家にいっていた

そしたら妙な札が家中に貼ってあった

私はきいた

「おばあちゃんなにこれ?」

「ああ、これはな、地獄虫が出たんじゃ」

おばあちゃんは平然と言ったが

その家の様子は尋常ではなかった

「地獄虫ってなに?」

私が家中を見渡しながら呟く

母と父はこの札のことには触れず

茶の間でテレビを見ている

どうやらこういうことは初めてではないようだ

「地獄虫というのはね。例えば人間の世界のゴキブリのようなもんだよ」

おばあちゃんは札を壁にペタペタと貼りながら私に言った

「ゴキブリ?」

私には意味が分からない

おばあちゃんがボケてしまってゴキブリのことを地獄虫といっているのだろうか?

「地獄虫に精神を食われたら人間にゃもう戻れないのよ」

おばあちゃんは相変わらず淡々と語る

私はちょっと不気味に思ってそれ以上きくのをやめた

そして夜が来た

家族は普通に食事をしている、が、私はふとあることに気づいた

ささいなことだ

みんなが箸を左手っもっているのだ

「あれ?みんな左利きだったっけ?」

私が尋ねる

「いいや、右利きだよ」

父が返す

「じゃあなんで箸を左手で持ってるの?」

私がきく

「え?!」

その時、母と父と祖母(祖父は既に他界している)が驚いた声をあげた

「しまった!地獄虫じゃあ、地獄虫が左手から入ろうとしとる」

おばあちゃんが叫んだ

そして札を父と母と自分と私の手に貼ろうとした

そこで私は気づいた

私も無意識に左手で食べていたのだ

「え?!」

私も驚いた声をあげた

その後、私達は箸を右手に持ち替えて食べた

正直、地獄虫とやらがそうさせたとは思えなかった

だが私達家族全員右利きなのに左手で食べていたのは気になっていた

そして食事が終わり私は二階にあがった

その時である

私は一階にいた

二階にいったのに一階にいたのだ

「どうしたの綾香?」

台所で何かを切っている母が私に声をかけた

母の話では私は二階への階段の前で一段目に登ったり降りたりを繰り返していたのだという

「いや、なんでもない…」

私は返した

妙な錯覚だ。幻覚を見ていた?これが地獄虫の仕業?

私は気を取り直して二階に登る

二階に登る階段の壁にも札がびっしりと貼られていた

そして私が二階にあがると父がいた

父は携帯の電話を持って震えていた

「どうしたのお父さん?」

私は尋ねた

「綾香、お父さん、もうダメかもしれない。」

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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