気づいたら男は何もない薄暗い部屋の中にいた
(どこだここは…?)
なぜこんなところにいるのか?
いや、その前に俺は誰だ?
…思い出した
俺はあの女を殺して、逃げてる途中だった
サツに追いかけられ、廃虚となったビルの屋上まで逃げて…
そこから記憶がない…
『やっとお目覚めになりましたか…』
不意に後ろから声がした
驚いて振り返るとスーツを来た紳士風の男性が立っている
『そう身構えなくてけっこうですよ?別にあなたに何もする気はありませんから』
紳士風の男は笑顔でそう言った
「…誰だお前は?」
『おっと、申し遅れました!』
紳士風の男は大げさに驚いてから、
『私はあなた方の世界の言葉で言うなら“死神”でございます』
と言った
「…お前ふざけてるのか?」
『とんでもございません。私いつだって大真面目でございます』
冷静に紳士風の男は言う
「…ここはどこだ?あぁ、それは答えなくていい。ここから出せ」
『それはできません』
紳士風の男ははっきり言い放った
「いいから出せ。お前終いにはキレるぞ?俺も」
『そうは言われてもできないものはできないのです』
「いいから出せって言ってんだろっ!!」
男が殴りかかった瞬間、紳士風の男が消えた
「なっ!?」
『無駄ですよ?私は“死神”。仮にも“神”です。人間が触れられるものじゃありません』
男が呆然としていると、紳士風の男は呆れたようにため息を吐いて話始めた
『あなた覚えていないんですか?
あなたは指名手配中の連続殺人犯“木曽善也”さん。
その犯行は女性だけをターゲットにし、犯してから殺すという極めて残忍なもの。
今までに7人もの女性を殺していて、逃走中だった。
しかし昼食を買うためにコンビニに行く途中に警察に見つかり、廃虚のビルの屋上に逃げ込み…』
「…お前らに捕まるくらいなら、とビルの屋上から飛び降りて死んだ…」
『おお思い出してくれましたか!』
紳士風の男は嬉しそうに言った
「ああ。おかげで最悪な気分だ」
「となると、お前が“死神”っつーのも本当か…」
『物わかりがよくて助かります』
紳士風の男はまたもや嬉しそうに言った
続く
怖い話投稿:ホラーテラー なかよしさん
作者怖話