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中編5
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人に優しく

・・・人に優しく・・・

彼の口癖だった。

毎日、毎日、考えて、行動した。

でも、評価してくれる人はいない。

毎日、自分なりに優しくイロイロやった。

『大変そうですね・・・手伝いましょうか?』

重そうな荷物を持つ若い男性。

しかし、若い男性は彼の言葉を無視した。

でも優しさは大事だ・・・そう思い、荷物を後ろから支えると老婆は急に軽くなった荷物と共にバランスを崩して階段から転落した。

恐くなって逃げた。

しかし逃げるところを見た人はいなかった。

またあるとき、無差別殺人鬼に追われる女性を助けるため狭い路地を必死に逃げ、右に曲がろうとした女性がいた。

右に曲がると壁があって行き止まりなので左手を引っ張り左にの道に行かせようとすると肩が脱臼し転倒。

そのまま殺人鬼に追いつかれナイフで背中を刺された。

また逃げた。

背中を刺した犯人でさえ、彼の姿を見なかった。

彼は人間ではない。つい最近魂として現世に残る霊なのだ。

彼に悪気はないのだが、優しさが必ず裏目に出た。

本人は、周りの霊達からこう言われている。

【神出鬼没な死神】と。

正義感を持ち、困っている人間を救おうと努力するのだが必ず裏目に出た。

あるとき、浮遊霊に言われた。

・・・逆に悪いことをしたら?・・・

彼にとっては、苦渋の決断だった。優しさが裏目に出るのは自分でもわかっている。

でも良心に反する、いつか優しさが人を救うと信じてきた。

そして、悪いことをしてやろうと街に行った。必ずいい事に変わると思いながら・・・

すると、歳老いた犬が用水路で溺れているのを見つけた。

バシャバシャと音をたて、必死に泳いでいる。

彼は、犬の頭を水の中に押し込んだ。

犬は、更にバシャバシャと力の限り泳いだが・・・とうとう力尽き水に頭を突っ込んだまま死んだ。

彼は悲壮感に襲われた。

何をやっても、自分には【悪行】しかできない・・・

悲しみに暮れていると、白い狐が現れた。

・・・おまえは善にも悪にもなれるが、どちらがいい?・・・

白い狐に問われた。

『善になって人を救いたい』

彼は、そう答えた

・・・善は、酷いぞ・・・新米が耐えれるほど甘くないぞ・・・

『わかっています!』

・・・では、善の力を授けよう・・・

狐は、そう言うと消えた。

・・・1つ忠告しとこう。善を行う際の人間な選出はおまえ自身で選べ・・・

次の日、誰を助けようかと街をさ迷っていると

金がなくて、食べ物を買えない男性のホームレスと出会った。

彼は、ホームレスにゴハンをいっぱい食えるだけの現金を与えた。

ホームレスは、現金を握りしめゴハンを買って満足した。

彼は満足だった。

苦しむ人を助けたと・・・

しかし、ホームレスは現金が今あるうちに・・・と理性を失い、余った現金で包丁を購入しコンビニ強盗をした。

ホームレスは、コンビニの店員の腹を刺し現金を盗み逃走。

彼は、それならと刑事にホームレスの居場所を匿名の電話で教えた。

刑事は、自分の手柄にしようとホームレスがいる場所へ向かった。

そしてホームレスが潜む廃工場で刑事は後ろからホームレスに包丁で刺された。

彼は、善の力を得ても誰かを幸せにすることができなかった。

彼は、助ける人の選抜が原因だと思い行動に出た。

次は、病院で死にそうな人を助けようと決心した。

彼は、身寄りのない老婆で末期ガンに侵され死にそうな女性を助けるために身体の中にあるガンというガンを除去した。

歩くことさえ出来なかった彼女は、次の日歩けるようになっていた。

しかし、彼女は退院しても帰る家もないし病院に治療代金を支払える金も持っていなかった。

彼は更に、彼女に多額のお金を用意した。

彼女は、喜んだ。

残りの余生を楽して生活できるほどのお金を手にした。

しかし、これを骨折で入院中の中年の男性が見ていた。

男性は、言葉巧みに彼女を騙し金をぶん取ると絞殺し山に遺体を埋めた。

善しか行えないので、中年の男性を殺すことはできない・・・直接的には。

彼は考えた。

中年の男性が持つ多額の現金を全て偽札に変えた。

何も知らない男性は銀行に預けに行ったとき偽札に気付いた銀行の職員が警備を呼び中年の男性は拘束され警察に逮捕された。

そして中年の男性は金の入手を殺害して手に入れたと・・・経緯を自供した。

彼は、お婆さんの無念を晴らしたと喜んだ。

『これが善だ!見たか!』

次の日、中年男性の偽札事件は大きく報道で取り上げられ男性の妻も関与している疑いが浮上し仕事をクビになった。

妻は、数日後自宅で首を吊っているのを発見された。

その後も、幾度となく誰かを助けようと行動したが誰一人も助けられなかった。

そして彼の世界で彼を知らない奴は、いなくなった。

緻密に計画され、直接手を下さずに人を不幸にする。

その評価は高かった。

【真の堕天使】と異名が付けられていた。

ある日、あの狐が現れた。

・・・ある意味有名になったな・・・おまえは堕天使と言われているが満足か?・・・

『満足なわけないだろ!』

・・・まあ、良い・・・おまえには生まれ変われる権利が与えられた・・・

『ほんとか?』

・・・あー・・・しかも、ある能力付きでな・・・

『そ、それは・・・どうゆう能力だ?』

・・・生まれ変わったら、わかるはずだ・・・だが、その能力は悪魔から頂いた能力だ・・・それでも、生まれ変わりたいか?・・・

彼は、この世界で人を助けられなかった。

生まれ変わったら、悪魔の能力を使ってでも人を助けたいと願った。

『頼む!』

・・・では、手続きをしよう・・・達者でな・・・くくく・・・

白い狐は、笑いながら消えた。

気付くと、彼は8歳の少年になっていた・・・というより体を乗っとった。

人を不幸にした過去の思い出が蘇る。

『これからは、人を幸せにしなきゃ・・・』

と、8歳の少年は思った。

次の日、少年の両親が交通事故で亡くなった。

彼に与えられた能力。それは・・・

『彼に関わった者は死ぬ』

・・・直接、手を下さなくても大事な人が必ず死ぬ・・・素晴らしい能力だろ?・・・

泣き叫ぶ少年の横で笑っていた。

・・・人に優しく・・・してみろよ・・・くくく

怖い話投稿:ホラーテラー 福岡県民さん  

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