中学生のころ住んでいた所の近所に「きちがい女」と呼ばれる女がいた
家からして不気味で庭も草がボーボーらしく、近づく人はほとんどいなかった
女のほうもめったに姿を見せず、たまに奇声をあげながら道を走ってる姿が目撃されたりという感じだった
中学生になってからそこに引っ越して来たので
直接その女を見たことはなかったんだが、友達などからそいつの特徴を教えられ、気をつけるようにとは言われていた
その特徴というのが
腰くらいの長さのボサボサな黒髪にでかい赤いリボン
真っ赤な口紅を塗りたくってる
長いピアスや指輪などアクセサリーをちゃらちゃらつけている
というものだった
ある日塾の帰りが少し遅くなったオレは
これじゃあいつもみてるテレビに間に合わない!と近道をすることに・・
近道をするということは
あの女の家の前を通るということ
しかしその時のオレは早くテレビがみたいという欲求のほうが強く
また、まだ6時代だからとどこか余裕もあった
だが
いざ女の家の前の通りにさしかかると、背筋がぞくっとした
女がいないことを確認してから少し歩く
もうちょっとで女の家の前というとき
「!!!」
そう、家の前に友達に言われていた特徴そっくりの女が座っていたのだ
さっきまでいなかったはずなのに
走って引き返そうとも思ったが、
もし引き返して追いかけられでもしたら・・
そんな想像をしてしまい、仕方なくそのまま歩くことに
冷や汗をかきながらも
オレは下を向き、神に祈る気持ちで、できるだけ早く歩いた
ちょうど女の横を通りすぎようとした瞬間、
「チャラン」
オレはつい、ソイツのほうを向いてしまった
女はニターッと笑いながらさっきの音の原因であろう、道に落ちたアクセサリーをオレに拾ってといわんばかりに
指さしてきた
改めてみると
ソイツは真っ赤な唇が
より一層目立つほど青白く、ガリガリで、目の焦点があっておらず、みればみるほど人間とは言い難いほど気味が悪かった
オレもはやく逃げればよかったんだが、
動揺しまくってしまったのとアクセサリーを拾わなかったら何かされるかも、という恐怖から
それを拾うことに
拾おうと腰を屈めると女の鼻息が荒くなった
(ああ、やばい)
本能的に感じたが
人間って本当に怖くなると動けなくなるらしい
(急いで渡してすぐ帰る)
頭にそんなことをよぎらせながら渡すと
女は充血した目を見開き、口が裂けるくらいニターッと笑って
「フーッフーッフー」
ますます鼻息を荒くして
赤いリボンがとれそうなくらい
頭を大きく前後左右に振り出した
それだけでも泣きそうだったが
次の瞬間、ポケットから
カッターを出して
「ありがとありがとありがとありがとありがとありがと」
と早口言葉のように繰り返しながら
自分の手を切りつけはじめた
もうその後はよく覚えていない
無我夢中で走った
いつ家に着いたかも分からない
しかしあの異常な光景はいつまでも頭から離れなかった
それから2週間ほど
ショックで家から一歩も出れず引きこもり状態。
まともに食事もとらなかった
心配していた両親に事情を話し
塾はやめ、それからしばらくは学校へも車で送迎してもらった
警察にも話したのだが、
「ああ、あの人か」と慣れてる感じだった
話しを聞くと
今までも過去にそういうことが何件もあったそうで。
しかし自傷行為をみせるものの、人に危害を加えることはしないので
警察も厳重注意やパトロールを強化するくらいしかできなかったそうだ
幸い、また親父が転勤することになり、
高校からは違う県にいくことになったため
今、その女がどうなっているかわからない。
もしかしたら
あの女は、人との関わり方がわからず、ただかまってほしくてあんなことをやった可哀相な女なのかもしれない
しかし
オレにとっては
今となってもトラウマであり、恐怖でしかない。
オレは思う
本当に怖いのは幽霊より人間だ。
怖い話投稿:ホラーテラー しんさん
作者怖話