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中編5
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毛玉【一章】

長い長い話になる、宜しければご覧になってください

当時の私は高校生でオカルト愛好会なる、部活には該当しないが、小さなクラブに所属して居た

メンバーは私を含めて4人、生活態度は各々違うが趣向は似通う間違いなく同類で有り、放課後のクラブの時間のみ付き合いのある特殊な友人達だ

季節外れで申し訳ないが、事が起きたのは九月の終わり頃。

暦上夏はもう終わっている筈なのに残暑どころか、夏真っ盛りのような非常に暑い日だった

教師の好意により、四人と小さい集まりながら私達には集いの場が与えられていた、資材置き場の一つを片付けただけの狭い部屋であったが、好きな事を存分に出来る空間は居心地が良く、部活引退なる切っ掛けの無い私達は今回もポツポツと集まり、その時も全員がそこに居た

円形の机を四方に囲む形で座る、順番は窓側から右回りに、B、私、C、Aの順番、Cが一番入り口に近い場所に座っている

A「今日‘も’すげぇの持ってきたぞ!丑三つ時に笑う箱だ。」

一応この集まりのリーダー格であるAが部室の机に薄汚れた木箱を乗せて得意気な顔、強調した通りに何処から探して来るのか、週一回程度の割合で曰く付きなる物を持ち込んでは様々な意味で楽しませてくれる彼である

その物の作り話を聞くのも楽しければ、毎回当然の如くハズレと申しましょうか、偽物で有る事が前提で、安全な恐怖を味あわせてくれたのです

しかし今回は

A「親戚の引っ越し先にコレだけが残されたんだと、前の住人が忘れてった物だと困るからって暫く置いといたが。でもな、この箱夜遅くなると笑い出すし、不気味だから捨てようって言ってたのを貰ってきたんよ」

B「それは…お前も中身を知らないって事?」

A「あぁ、でも凄く軽いぞ、空かも知れない。でも笑うんだ、笑い声は俺も聞いたからそれは本当」

何時もと違う。Aが仕組んだのでは無く、全く正体不明と聞いて思わず一瞬顔をしかめる

私「おもちゃとかじゃないの?前の住人が置いてった物なら、開けて良いかも分からないし」

第六感とは違うが、何となく開けるのは躊躇われた

止めておいた方が良い。

そう感じていたのは私だけでは無かった、Bを見ると箱を見詰めて嫌な顔をしていたから

しかしそうでない奴も居た

C「とりあえず開けちゃえば良いじゃん!」

言うが早いか、木箱の蓋を密封していたガムテープを、剥がして、開く

…今でも、止められなかったのが悔やまれる瞬間だ。

真っ先に視界に飛び込むのは、粘着面にびっしりと記された、詳しくないのだが形状的に間違いなく、梵字

私は凍り付いてしまった、印刷したようにしっかりと書き刻まれていた。

誰かのイタズラにしては、手が込みすぎてはいないか?

C「うわ!何コレっ」

Cの驚いたような声により漸く開かれた箱の中身を視界に入れる事が出来た

箱から溢れかえりそうなほど大量の真っ黒な、髪の毛だった。

ガムテープと同様の梵字らしき文字列が、びっしりと箱の内側にまで書かれていた。

ぞわっ、と背筋が冷たくなった。いや、にわかに部室自体の空気が冷たくなった気がする。

C「何だろうね…あはは」

苦笑か、空気を紛らわすかのようなCの笑い声。そうだ、これではまだ何が笑い声をたてたのか、わからない。

私「…奥にまだ、何か有るのかな。」あはは

B「そうだ、髪の毛に隠れてるだけで、○○(私)の言ってたオモチャとか。」あははは、は、あは

A「コレひっくり返さなきゃ中身は……C?」

Aが一番に異変に気付いた、Cの笑い声が止まらない

Cは口元を両手で覆い、重ね合わせた指の隙間から途切れ途切れの笑い声を出し続けている。

笑って居るのに、目には涙が浮かんでいた、首を横に振っている。Cの異常が目に見えて居るのに、私達にはどうすれば良いのか分からなかった

あはは、あはははははは、あはははははははは

吐き出す音の方がだんだんと多くなってくる、Cから目が離せない…

あははあはははははははは…

Cの目がぐりん、と上を向いて、黒目が見えなくなった。椅子の上から転がり落ちたのを、慌てて助けにかかる。失神しているようだが、それでも笑い声が、止まらない

両手が口元から落ちて、ビクビクと痙攣を始めた瞬間からだ。笑い声が変わった。

ヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャ

老婆の様に枯れた甲高い声だ、それも長くは続かない、声が変わった頃から声を吐き出す事しかしないCの肺からは空気が無くなり、やがては途絶えた。

笑ったまま大きく開いた口元から喉の奥の筋肉が痙攣しているのが見えた、無い空気を、それでも絞りだそうとしているのだろう

バン!!!!

机の上から大きな音が聞こえた、角度的に何が起きたかは分からないが、Cの胸が大きく膨らんだ

呼吸してる…

安堵に泣きそうになりながらも、Cは以前意識を失ったままだ

Aが急いで教師に伝えに行く

Bは…

私「B…?」

あの「箱」を、部室の棚に紛れ隠していた。

B「隠さなきゃ、教師に見つかったら持ってかれちまうだろ?」

私「事情話して、持ってって貰った方が良いんじゃ無いのか…?」

B「駄目、多分まだ、何が有るかわからない。どんな風に処理されるかも分からないなら、自分らで遣った方が良い」

この後Cは救急車で病院へ運ばれ、大きな騒動となったが、箱は結局Bが自宅に持ち帰った。

Cから一番遠くに座っていたBは、机を挟んだCよりも箱の様子がよく見えていたで

Cの笑い声が老婆のそれに変わった頃、箱の中の髪の毛が箱から浮き出る程大きく盛り上がったそうだ

まるで、中から何かが出てこようとしているように

あの音はBが木箱の蓋を閉める音だったのか

今回は此処まで、そしてまだまだ序章にあたる。

長い話になりそうだ、気力の有る方は、付き合ってくれればと思います。

それでは。

怖い話投稿:ホラーテラー 動物嫌いさん   

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