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短編2
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頼んだぞ!

初めての投稿です。

誤字脱字を御許しください。

これは、生前祖父が私に話してくれた実話です。

祖父はその日シベリアに送られる船を待っていました。

送られる者の人数は多く、何か物資を運ぶという事も有り10数隻ある内の6番目に出発する船に祖父は乗ることになっていました。

『乗り込むまでに

まだ少し時間がある・・・。』

疲労は計り知れず祖父はいつの間にか硬く冷たい床の上で眠ってしまいました。

・・・・・・・・・・・・。

どの位時間が経ったのか、まだしっかりと覚めない頭で『船の時間は…』と気にしていると不意に何かの声が聞こえ出そうです。

『・・・・・っいい。』

始め声は遠くに感じられたのですが、次第に近づき、横になった自分を見下ろしている様だったと言います。

当然祖父は瞳を閉じていたので、それは感覚的なものだったのでしょう。

しかし、次ははっきりと聞こえました。

『まだ、眠っていていい。

・・・・後は頼んだ。』

それは優しく、穏やかで、安心した祖父はまた深い眠りに着いたのです。

次に目が覚めたら時、祖父は頬が真っ赤になる程殴られた後でした。

寝過ごしたのです。

自分が乗るはずの船はとっくに出港し、祖父は13隻目に乗ったそうです。

祖父は自分の頬をパンパンに腫れ上がらせる原因を作った声に聞き覚えがあったのですが、同乗した別の日本人からその話を聞くまで半信半疑だったと言います。

その話とは、

半日前に出港した祖父が乗るはずだった船が座礁、沈没し、乗っていた捕虜は誰一人助からなかった。

というのです。

そこで、祖父は泣き崩れてしまったそうです。

その声は、共に笑えない戦地で笑い合っていた

既にこの世を去っていた戦友のものだったからから……

祖父は戦地に行ってから一度として泣いた事の無い男だったらしいのですが、その時初めてその場にいた人達の目も気にせず大泣きしたそうです。

祖父は次々と人が亡くなっていく過酷な日々を友の言葉を糧に生き抜いたそうです。

『後は頼んだ。』

その方は何を頼みたかったのでしょう。

残された家族の事?

成し遂げる事の出来なかった夢?

揺れ動く国?

それは、今となっては私などには到底分かりません。

なので、祖父が最後にこの話を締めくくった言葉で、私も話を締めくくろうと思います。

『じーちゃんは、そいつに今も感謝してる。

だからお前も精一杯生きて

誰がを救える時には出し惜しみせずに、

友達を助けてやれる大人になれ』

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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