私(場合によりA)と友人(以下B)の二人で、あるホテルに泊まった時の話しです。
Bが、東京を巡るツアーに参加したいと言い出し、私は丸め込まれる形で同行する事になった。
東京は激しい人混みのイメージがあり、初めは乗り気ではなかったけど、その日は平日昼前だったためか思ったより人もいなかったので、ゆっくり楽しむことができた。
私達はその気分のままツアーで指定されたホテルに向かった。
ホテルはかなり高層で新しく、部屋も広々としていてとても綺麗で、私もBも大はしゃぎ。
一通り見て、騒ぐのにも飽き、まだ外も明るかったので、私達は買い物に出掛ける事にした。
買い物を終え、ホテルに帰る頃にはすでに真っ暗。
部屋に入るなり、何より先にテレビの電源を点けるテレビっ子のB。
特にする事もなかったので、しばらく二人でテレビを見ていると…
ブンッ…ジッ…
と、突然テレビが消えた。
私はBが操作ミスで消してしまったと思い、しばらく画面を見ていた。
でも、再び点く気配がなかったためBの方を見ると…
何故かBも私を見ていた。
見つめ合う二人…
その束の間の沈黙を破ったのはBだった…
B「何で消すん…」
悲しそうな目で訴えてきた。
私「いやいや…うちリモコンとかいじってないし」
チャンネル決定権は最初からBにしかないし、見たい番組ある??の一言も無く、更にはリモコンすら触らせてくれなかったくせに…
何たる仕打ち…
Bにはこんな個性的な一面がある。(余談)
リモコンを探していると、(やはり)Bのベッドの枕元にあった。
しかし、妙な事に、私もBもリモコンから離れた位置にいたので操作出来るはずもなかった…
私「これは…まさかの料金制か?」
B「今時?」
私+B「「……」」
その後、フロントに電話して聞いてみたけど、電気のトラブルも無かったし、他の客からの問い合わせもなかったらしい…勿論料金制でもない…
もう一度テレビの電源を入れてみると…
何事もなかったかのように点いた…
夜は始まったばかり…
いきなり先制パンチを喰らってしまった二人…
この先何も起こらない事と、自分より先にBが寝ない事を祈るばかりだ…。
テレビが消えて以降は何事も無く…気付けば深夜0時を回っていた。
話が盛り上がっていたし、二人でいる強みもあってか私達は再び寛いでいた。
しかし、しばらくして会話が途切れ始めた頃…
私の恐れていた事が起こりだした。
Bがうつらうつらし始めたのだ。
考えてみれば、泊まりの時、Bが私より遅く起きていた事はなかった…
このままではマズいと思い、目を覚まさせるために風呂をすすめた。
B「先入っていいん?」
私「ええよ。眠そやし早よ入ってきいや。」
B「眠ないよ!Aの方が眠そやし!うちが上がって来て寝てたら叩くしな!」
どうやらBは、私が隙をついて眠ると思っているらしい。
Bは怒り露わに私を牽制しながらバスルームへ向かった。
その間一人でいるような感じがして怖かったけど、シャワーの音が聞こえてきて何となく安心できた。
しばらくして、スッキリとした表情のBが戻ってきた。
それと入れ替わる形で私はバスルームに向かった。
3点ユニットだったため、トイレと浴槽を隔てるカーテンに、洗面台には大きな鏡設置されていた。
Bが入った後だったので、鏡は曇って私の姿もぼんやりとしか写せていなかった…カーテンはちょうど人が隠れられる程度に中途半端に締まっていて、何となく不気味…
私は急いでシャワーを浴び、髪もろくに乾かさずにバスルームを出た…
次の瞬間異変に気付いた。
部屋が真っ暗になっている…
一瞬気を失いそうになったが何とか持ちこたえBがいるであろう所へ向かう。
テレビが時々青白く光って、それによりBのベッドが何となくモッコリしているのが分かった。
耳をすませば微かにイビキも聞こえてきた…。
流石にこの時は腹が立ったけど、今日は本当に疲れたので仕方ないと思い、私も眠る事にした。
しばらくは寝付けず、点いていたテレビを見たり、何度か寝返りをうったりして、何とか眠れそうになったので、壁と向かい合う形で目を瞑った。
いつの間にか眠っていたようで、何時間か、はたまた何分経ったのか分からない頃…
ゴトッ…
何かが落ちるような音が聞こえて目を覚ました。
カーテンの隙間から月明かりが差し込んでいるが、やけに部屋が暗い事に気付いた。
テレビのあった方を見ると、いつの間にか消えている…
きっとBが消したんだと思い、また目を閉じた。
でも、一度目を覚ましてしまったせいか、あまり眠気を感じない。
それに、妙に静か過ぎるのが気になる。
私が眠るまで聞こえていたBの寝息も聞こえてこない。
もしかしたらBも起きているのかもしれないと思い、寝返りを打ち、Bの方を向いた…
瞬間、体が固まり呼吸も瞬時に止まった。
Bの寝ている真上、1mくらい間隔をあけて、うつ伏せ寝の状態…丁度Bと平行になって向かい合う形で宙に浮いている女が見えた。
顔などはBの枕元に届くほど長い髪に隠れているせいか、暗くて見えないが、シミや穴だらけの白っぽいいワンピースか、包帯のようなものを身に纏っている。
所々露わになっている皮膚には掻きむしったような傷や爛れなのか抉れたのか分からないような跡が見えた。
叫んで逃げ出したいのに、体が震えて動けないし、声も出せない。これ以上見ていたく無いのに目を瞑る事さえ出来なかった。
女は微動だにせず変わらない状態のまま、ただ宙に浮いている。
Bは気付いているのか、眠っているのか、私に背を向けているので分からないけど…
肩が微かに震えているように見えた…。
気付いた時には部屋中が明るくなっていた…
目の前には壁がある。
最初に眠った状態のままだ。
あれは夢だったんだと安堵して、Bの方を見ると、すでに起きていたようで、ベッドの上でボーッと座っている。
寝起きだったせいかBは無口で、私も特に話しかけることはせず二人して荷物をまとめ始めた。
ホテルを出て、電車に乗ってしばらく経った時…
B「昨日の夜3時くらいに起きとった?」
ようやくBが話しかけてきた。
私「え…3時かは分からんけど…起きたかもしれん。」
私の答えを聞くと、Bは再び無口になった。
私「…なんかあったん?」
何となく嫌な予感がした。
B「…いや…何もないねんけど。」
明らかに何かあった様子…
もしかすると…
あれは夢では無く、Bも同じものを見たのかもしれない。
何となくそう思い…
私「そういえばうち、変な女見てんけど…夢やったかもしらん」
それを聞き、驚いた顔をするB。
B「マジで!?うちも見てんけど!!」
私「マジで!?(夢違ったんや)」
B「むっちゃ怖かってんけどぉ!!今思い出しただけで鳥肌たつもんっ!!!」
私「まぁ〜じかぁ〜!!よかったぁうちだけ見たんか思た!!絶対B寝てる思ったし!!」
恐怖なのかなんなのか盛り上がる私達。
私「でも、もしうちがBの状況やったら絶対漏らしてたわだって、めっちゃ近無かった!?」
B「マジで怖かったし、目覚めたら真上におらはんねんもん…」
そこである事が気になった私…
私「…顔とか見たん?」
B「…え?」
私「うち暗くて分からんかった…」
B「…へぇ…うちもチラッとしか見んかったし、よう分からへん」
私「そうなんやぁ」
B「…うん」
突然元気の無くなったB。さっきまでの盛り上がりが嘘の様に再び静かになった。
余程恐ろしい顔だったのだろう…私は見えなかったからいいとして、Bは一人だけ見てしまったのだ…嫌な思いをさせてしまったに違いない。
その後は何を話す訳でもなく、眠りながら地元に着いた。
それから何事も無く数年が過ぎても、私とBは変わる事なく仲良くやっていた。
そんな時、久しぶりに地元のホテルに泊まる事になった。
あの頃と変わらず大はしゃぎの私とB。
B「めっちゃ久し振りやな!?二人でホテル泊まるん」
私「ほんまやぁ!前泊まったんていつやっけ?」
B「あれ…いつやっけ?」
とりあえず思い出せなかった私達のテンションは酒も入って否応無しに上がっていった。
そして、気付けば夜で、私達はベッドに寝転んで喋っていた。
私「先に寝んといてや!」
B「自信ないわぁ〜Aはほんまよく起きてられるなぁ…」
私「今日はオールする言うたやんか!」
B「えぇ…そうやっけぇ…」
しばしの沈黙がつづき…
私(あかん…コイツ…完全に寝る気や…)
私は諦めて、眠くなるまで本を読む事にした。
本を開き、読もうとした時…
B「それ…なんの本?」
Bが眠そうな顔をして聞いてきた。
私「…起きとったんや」
B「もうすぐ寝そうやってんけどさぁ…前の事思い出したら怖くなった」
私「…」
よりによってここ(ホテル)でその話しをするか…
思い出したくなくてあえて避けていたのに…
Bは気にしていないようで、あの時の事を話し出した。
【続きます】
ごめんなさい。終わらせるつもりが字数調整出来なくていったん切りました。
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作者怖話