これは、父がまだ子供の頃の話。
小さい頃わんぱくだった父は、よくカエルなどを捕まえてはツボの中に入れて飼っていたという。
ある日、ツボの中に何匹も入れたカエルの様子を見てみようと覗きこんだ。
するとツボの中には大きな蛇が入っており、カエルは一匹残らず食べられてしまっていた。
その蛇は見たこともないような、白っぽい奇妙な色をしていた。
まだ消化されていないのか、蛇の腹はデコボコしていて気味が悪かった。
カエルが食べられてしまい腹が立ったのと、珍しい蛇だということで、そのままツボに蓋をしてしまった。
そして、その日の夜……
ある夢を見ていたという。
それは大きな大きな…自分の身の丈は優に超える深さがありそうなツボの中に閉じ込められていた。
ツボの内側はヌメヌメとしていて、気味が悪かった。
上を見上げると、蓋がガッチリと閉じられている。
とうてい逃げ出す事など出来そうにないツボの中で、父は大きな声で助けを求め叫んでいた。
だんだんと息が苦しくなってくる……
それはあまりに長い時間のように感じられ、このまま死んでしまうのではないかと考えてしまう程の恐怖を身の底から感じていた。
果たして、どれぐらいそうしていたのか……
目覚めた時には、祖母(父の母)に頬を叩かれて起こされていた。
外はもう昼近くになっていた。
その後、父は祖母の話を聞いた…
祖母も、その夜に夢を見ていたらしい。
父が蛇をツボに閉じ込め軒下に隠す様子が、まるで語りかけてくるように鮮明に映し出されたという。
そこで目を覚ました祖母は、ひどくうなされている父の様子を見て驚く。
その時は、祖母が叩こうが何をしようが目を覚まそうともしなかったそうだ。
何か異常なものを感じ取った祖母は、もしや…と思い軒下のツボを探しに行った。
見つけたツボの蓋を開けると、夢で見た大きな蛇がそこにいた。
ツボの中から出してやると、スルスルと蛇はどこかへ去っていったという。
すると、先程まで目を覚ます様子もなかった父は無事目を覚ましたのだと。
父は祖母に泣きながらこっぴどく叱られた。
あの蛇はただの蛇じゃない…
神聖な蛇の祟りを受けたら、ただでは済まないと…
そう教えられたのだった。
あのまま放っておいたら、ずっと目を覚ます事はなかったのかもしれない……
そう考えると、父は心底ゾッとしたという。
怖い話投稿:ホラーテラー geniusさん
作者怖話