短編2
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変質者

最近このあたりで変質者が出たそうよ、と母が言った。

学校にいく前に、朝食を食べていたときだった。

どんな変質者なのか母に尋ねると、その変質者は強姦魔の類で、通学路の途中にある公園で何人か女性を襲ったそうだ。

ナイフを突き付け、抵抗するようなら切りかかってくる。逃げれば追って来ないが、叫んだり抵抗したりすれば容赦ないのだという。

「アンタは妙に自信あるから、気をつけなさいね。ナイフで刺されたら怪我じゃ済まないんだからね」

私は柔道部員で、ケンカならそこらの男子よりも強い。それに自分で言うのも悔しいが、ルックスはかなり悪い方だと思う。

大丈夫、私を襲う物好きなんていないから。もしそいつが現れたらぶっ飛ばしてやるよ。

母にそう言うと、お願いだからホントにやめて、ちゃんと逃げるのよ、と言われた。

朝食を食べ終わり、いつもの時間に家を出る。遅刻はしないが、そのかわり公園を横切らないといけない。変質者が出ると言われても、公園を含む団地をぐるりと外周したら遅刻確定なのだ。

毎日通る公園。でも今日は違った。

ヘルメットを被った男がいる。ナイフを持っている。

まさか本当に会うとは思わなかった。

男は私に近付いてくる。私は身構える。逃げるなんてことはしない。私が捕まえてやる。

蹴りがとどく間合いにまで来てみろ。

でもその男は途中で立ち止まって、赤いスプレー缶を取り出して、私に向かって噴射した。

飛距離がすごい。視界が奪われる。催涙スプレーか!?

私は押し倒され、男は馬乗りになり、手に持っていたナイフを私の腹に振り下ろす。

サクッ・・・・

ナイフは根元まで腹部に埋まっているのに血は出ていない。本物のナイフじゃない。押したらヘコむオモチャのマジックナイフだ。

男はヘルメットを外す。

「だ~か~ら~逃げろって言ったじゃないの!!」

ヘルメットの下にあったのは、変質者の男ではなく私の母の顔だった。

「本物だったら死んでるわよ!!」

母は私から離れ、マジックナイフと、催涙スプレーもといゴキジェットを持って家へと帰っていった。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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そんなアホな( 'ω' ;)

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