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中編4
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忌み火 完

■シリーズ1 2 3 4

忌み火 2の続きです。

数ヶ月経った頃、僕は神社で匿ってもらう生活に慣れていました。

朝起きて、手洗舎で身体を清め末殿から本殿まで順番に参拝し、神社の一員として仕事をしていました。

僕が神主さんから絶対に守りなさいと約束させられたことは「鳥居の外に出てはならない」の一つだけでした。

神主さんは毎朝、神社の周りにある鎮守の森という林にお供え物として「葡萄」と「筍」を置き、暗くなる直前の夕方に回収していました。

そしてとうとう、僕が「黄泉醜女」達に見つかる日がやってきました。

夕方、僕の部屋にやってきた神主さんが、お供え物を見せてくれました。

神主さん「これを見てください。恐らく黄泉醜女が食べたのでしょう。急いで本殿に来てください。」

僕は普段、祭祀以外は絶対に立ち入ることができない御神体が祀られている本殿の奥に案内されました。

神主「最後に此処で参拝してください。」

僕は神主さんの「最後」という言葉に怯えましたが、気を取り直し真剣に御神体に祈りました。

参拝が終わると新しい白装束に着替えられさせ、顔を隠すための白い布を頭から被せられました。

神主さんの導きで夜の境内に出ると、他の神社から協力にきていた神主さんや巫女さんたちが待っていました。

境内の真ん中を囲うようにかがり火が焚かれ、その中央に椅子が置かれていました。

神主さん「いいですか。何が起こってもこの椅子から離れないでください。声を出してもいけません。今日で全てが終わります。頑張ってください。」

僕は何度も頭を縦に振り頷きました。すでに恐怖で声を出すことは出来ませんでした。

僕が椅子に座ると神主さん達は本殿の中に入り、僕は深夜の境内で独りきりになりました。

椅子の周りではかがり火が焚かれているものの、夜の寒さと恐怖で身体がガタガタと震えだしました。

何時間経った頃でしょうか、僕は時間の感覚が麻痺していました。「早く終わってほしい」とだけ頭の中で繰り返していました。

僕がしばらく前方の暗闇を見つめていると、暗闇の中から人が近づいてきました。

その人物が見えてきた時、僕の心臓は太鼓のように高鳴り、全身の鳥肌がたちました。

それはNでした。

黄泉醜女に喰われた時と同じ格好と傷で、フラフラこちらに歩いて向かってきます。

近くまできた時、Nは間違いなく死んでいる事を確信しました。

Nの顔や頭の皮膚は、ところどころ食いちぎられ、どす黒い肉が見えています。

全身から流れた血は凝固し赤茶色になっています。顔色はもはや生きている人間の色ではありません。

N「おーい〇、迎えにきたよー」

僕「・・・・・・」

N「おーい〇、いるんだろー」

僕「・・・・・・」

N「〇、俺を助けてくれよぅ」

僕「・・・・・・」

Nはかがり火の周りをぐるぐる回りながら、中の僕を探していました。しかしNには僕の姿が見えていないようでした。

僕は微動だにせず、Nの動きを目だけで追っていました。

次の瞬間、Nは円陣に焚かれたかがり火を倒し、中に入ってきました。

N「この中かなぁ…」

僕「・・・・!!」

僕が死を覚悟したときです。

本殿の方から神主さん達の祈祷の声が聞こえてきました。

その声を聞いたNは苦しみだし、その場に倒れこんでもがいていました。

Nのお腹が盛り上がり裂けました。

僕「!!!」

Nのお腹の中から、3人の黄泉醜女が出てきていました。

「ゲゲゲゲゲゲゲゲ」

気持ち悪い鳴き声をあげながら、蜘蛛の様に四つん這いで本殿の方へ向かっていきました。

僕は思わず遠ざかっていく死の恐怖を目で追いました。

本殿の前に、僕が最初に剃り落とした体毛を折り込んで作った「人型」が置いてあります。

黄泉醜女たちはその人型に喰らいついていました。その人型を咥えながら、再びこちらに戻ってきました。

僕「・・!!」

黄泉醜女たちは人型を咥えながら、Nのお腹の中に入っていきます。Nの身体がお腹から二つに折れ、ズブズブと地中に沈んでいきました。

Nの顔が地中に飲み込まれる寸前、Nがこちらを見ました。

僕に気づいた様で、最後の力を振り絞りつぶやきました。

N「…逃げろ」

悪夢の様な出来事は、日の出と共に終わりました。

神主さんが僕に近づいて「もう大丈夫。終わりましたよ」と言ってくれた瞬間、僕は神主さんに抱きつき泣き叫びました。

神主さん「よく頑張りましたね。これであなたの命が奪われることはありません。後はしっかりと神様に感謝しながら、長生きして下さい。」

10年経った今、僕は生きています。

健康管理に気をつけて、出来るだけ長生きできるように頑張って生きています。

時間が許す限り神社に参拝し、神様に祈りを捧げています。

僕「どうか私を守ってください」

そして今日も…

巫女の顔をした…

小さな蜘蛛が…

足元から僕を見上げ

醜く笑いながら囁きます…

「はやくこっちにこい」

これでお話は終わりです。長々とありがとうございました。

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怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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神様に感謝より、Nに感謝だわ

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