心霊スポット巡りといったって、所詮は小学6年生のする事。
せいぜい自転車で行ける範囲内に限られる。
だが、、、何度も言うようだが兄は〈見える人〉なのだ。
近場でもスポットはたくさんあり
(あそこだけは近寄りたくない!)
という場所も何か所か知っていた。
タクシーに乗り込んだとたん、死霊の気配が消え失せた。
兄がその時
(海の〈におい〉と関係があるのでは?)
と考えたのには理由がある。
兄はそれまで
海にひそむ死霊の、あまりの多さに、すさまじい恐怖を感じていた。
(奴らがもし海から出て来て、大勢の人間にとりついたらただじゃ済まない!)
と危惧していたのだ。
「もしも、俺の見える光景が他の人にも普通に見えたら、海水浴なんか誰もしなくなる!」
そう豪語するほど、海って怖い所らしい。
そんな海にうじゃうじゃいる亡者たち
何故かバリアーでもあるかのように海に住み続ける。
何とか海辺には上がれても
車に乗っただけで、、、たぶん、、、海に引き戻された。
霊というものは言うまでも無く、鎖などでつながれてはいない。
本来どこへでも行ける筈なのだ。
兄は懸命に考えて、そして気付いた。
タクシーの内と外
違うのは
(潮の香りがするかしないか、ただそれだけじゃないか!)
少年の頭でさらに必死に考える。
そして、、、まず最初にひらめいたのが
(ファ○リーズの香りで悪霊を撃退できないか?)
という事だったらしい(笑)
キャンプのあった日の翌日から、兄は夜中にちょくちょく家を抜け出した。
俺には理由を言わず
「ちょっと出てくる」
と言って出掛けるのだが
夜の11時に子供がどこに行くっていうんだ!
聞いても何も答えない。
(まあ、兄ちゃんは俺と違って賢いからいろいろあんだろう)
くらいに思っていた。
そんなある日
兄が明け方の5時まで家に戻って来なかった。
さすがに
(こいつ死んだか?)
と心配していたところ
顔面真っ青の兄がへろへろになって帰って来た。
「失敗した、とりつかれた!」
か細い声でそう言うとベッドに潜り込んだ。
怖い話投稿:ホラーテラー 双子の弟さん
作者怖話