■シリーズ1 2 3 4
荒御魂 1の続きです。
夜の裏山の中で、人のような「何か」に追われた僕たちは、山の中を必死に逃げ回っていました。
その「何か」かから逃れ、僕たちは仲間の無事を確認していました。
A「なんだあれ!なんだあれ!」
僕「助かった?もうこない?」
C「みんな大丈夫?」
B「・・・・・」
僕たちが会話をしている間、Bだけが無言で周りをキョロキョロ見渡していました。
B「ぎゃああああああああ」
全員「!!!」
Bが絶叫し、僕たちはその場を飛びのきました。
C「なんなんだ!でかい声だして!」
B「見て!見て!」
・・・・・・
そこは僕たちの学校で最も怖い場所とされていた注連縄に囲まれた「祠」の目の前でした。
「わああああああああああ!」
僕たちはBを先頭に再びその場から走り出そうとしていました。
ドン!
僕「いた!」
ドドン!
A・C「急に立ち止まるなよ!」
先頭のBが急に立ち止まり、前方を凝視しています。
僕「・・・B?」
A・C「どうした?」
B「あ・・あぁぁぁ」
Bが震えています。
後ろにいた僕たちも何事かと前方を見つめました。
サクサク・・・
僕「・・・っひ!」
B「・・ひぃ!」
A「・・あああ!」
サクサクサクサクサクサク
僕たちの前方にある林・・・
その間から夥しい数の地面を這う「白い手」がこちらに近づいてきていました。
右を見ても左を見ても「白い手」が見えます。
B「かかかこまれてる・・・」
C「どどどどうする?」
僕「いやだ!たすけて!」
僕たちが選択を迫られる中、Aが突然振り向き走り出します。
A「わあああああああああ!」
「わああああああああああ!」
Aにつられて僕たちもAの後に続きました。
とっさの選択でした。
僕たちが肝試しの目的地にし、怖さのあまり一度は中止しようとしてた「祠」のある注連縄の中に逃げ込んだのです。
そこ以外に逃げ場は無く、その場所以外は地面を這う「白い手」に囲まれていました。
僕たち4人が注連縄の中に入った瞬間。
ザアアアアアアアアアアアアアアアアア
と風が木々の葉を揺らしました。
それは僕たちが踏み入れた「祠」を中心にして大きな渦を描いていました。
木々のざわめきに一瞬、気をとられましたが、自分達の身に迫る恐怖から目を逸らすことが出来ずに
僕たちの周りを囲んでいる「白い手」を見つめていました。
(もしこの中まで入ってきたら)
絶望的な予感が脳裏をよぎります。
カサカサカサ・・・・
目の前を埋め尽くす「白い手」が再び迫ってきました。
僕たちはガタガタ震えながら、「白い手」の先にあるものを凝視していました。
「ひいいいいいぃぃぃぃ」
沢山の「白い手」の「顔」が薄っすら見えてきました。
僕たちの恐怖は既に限界を超えています。
暗闇の中に少しずつ浮かびあがってきたのは
たくさんの
「白い顔」でした。
目は真っ黒の窪み
鼻は薄っぺらく二つの点
口は切傷のようにパックリ赤く
醜く顔歪ませながら
悪意に満ちた顔で僕たちを笑っていました。
老若男女、様々な顔で・・・・
「ゲゲゲゲゲゲゲゲ」
「ギャハハハハハハハ」
「ゲラゲラゲラゲラゲラ」
「アハハハハハハハハ」
「ゲッゲッゲッゲッゲ」
「キャハハハハハハハ」
僕たちの前方で、夥しい数の「白い顔」が暗闇の中をユラユラ揺れながら笑っています。
その笑い声で全員が腰を抜かし、悲鳴を出すことも出来ずに、注連縄の外で「白い顔」が踊り狂うのを見ながら失禁していました。
恐ろしい笑い声は僕たちの頭の中で鳴り響き、「白い顔」はひとつ、またひとつと闇に消えていきました。
「あははははあぁぁぁぁ・・・」
最後の笑い声と共に「白い顔」は全て消えました…
しばらく全員が恐怖で凍りついていました…
「…助かったの?」
誰かが口を開きました。
B「たすかった!たすかった!
Bは泣きながら喜んでいます。
A「うわああん!ごめんなさい!」
Aは泣きながら何かに謝りだしました。
C「これからどうする?どうする?」
さすがのCもおろおろしています。
僕「もう怖い目に遭うのはやだよ!」
そして全員で話し合った結果。
朝になるまでこの注連縄の中で、ひたすら耐える事になりました。
僕はもう一度、周りを見渡しました。
注連縄を縛りつけた樹齢の高い木々が周りを囲み、その生い茂った葉は完全に空を塞いでいます。
中心には不気味で一番大きな樹木があり、その下にある苔が生えた小さな「祠」が、僕たちの背中から無言の圧力をかけてきました。
中心から一番遠い場所で僕たち4人は円陣を組んで座りました。
無言で朝を待つ僕たちの耳に
「・・・クスクスクス」
「・・・ヒソヒソヒソ」
幻聴のような話声が聞こえてきました。
続きます。
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怖い話投稿:ホラーテラー 見世永さん
作者怖話