私の元同僚Hが高校の頃の話。
それを最初に見たのは、ちょうど夏休みが明けてすぐの日だったか…
同じクラスの男子Aの背中に何か憑いているのが見えたのだという。
それは、ずいぶんと背の小さいお婆さんのようだった。
ニコニコしながら、Aの事を眺めている。
(あれは…あいつの守護霊なのかな)
そう考えながらじっと見つめていると、お婆さんもこちらに気づいた。
ニコニコしながらこちらに小さくおじぎをすると、やがてスゥッと見えなくなった。
それからというもの、そのお婆さんはたまに見えるようになった。
大抵はニコニコしているのだが、テストの結果を返された時には何とも渋い顔をしていた。
それを見た時は、思わず吹き出しそうになってしまったという。
そんなある日の事……
いつものようにAの後ろにお婆さんが。
ただいつもとは少し違っていた。
鬼のような恐ろしい形相でAを睨んでいた。
(うわ……Aの奴、何かしたのかな?)
その時ばかりは、お婆さんになるべく目を向けないようにした。
しかし、少し気になった。
学校が終わると、Aをそっとつけてみる事にした。
帰り道、Aはこそこそと小さな路地裏に入っていく。
段ボールの中に入れた何かを見ている。
しばらく眺めて何かした後、Aはその場を去った。
Aがいなくなった後、段ボールの中を見てみると…
猫だった。
全部で5匹いた。
その全てが、逃げられないように針金で足をグルグルに巻かれていた。
さらに両目には小さな釘が打ち込まれている。
猫はまだかすかに蠢いているようだったが、恐ろしくなりその場を慌てて立ち去った。
次の日の学校。
相変わらずAの後ろのお婆さんは、恐ろしい形相でAを眺めたまま。
そしてしばらくすると、いつものように消えると思うと…
少し違った。
いつもは空中にフッと消えるのが、Aの中にスゥッと入り込むようにして消えていったのだ。
その翌日から、Aは学校を休みだしたという。
そして二度と学校に来ることはなく、学校をやめてしまったのだ。
詳しい話は聞かされなかったが、Aが突然発狂したらしいと近所では噂だった。
Aの近所に住む友人の話では、深夜に一度Aを見かけたのだという。
ズリズリ…ズリズリ…
家の近くを、くねくねと不気味に這いずり回っているAを。
それからAの家は引っ越していったため、どうなったかは分からない。
Aの背後に見たお婆さんとの因果関係は不明だが、今でもあの恐ろしい形相は忘れられないのだとHは話した。
怖い話投稿:ホラーテラー geniusさん
作者怖話