今回は心霊ではありませんが、自分の中で一番怖かった体験です。
注意・グロテスクな表現があります。ご了承下さい
真夏の午後、まだ日が落ちない時刻、当時トラックが新車になった事もあって仕事にも大いに熱が入っていた。
カンカンカン…。
踏切渋滞、いつもならストレスが溜まるが、今日は新車に乗っている!踏切なんぞ関係ない。
車載冷蔵庫からコーヒーを取り出し、タバコに火を付ける。
車内を見渡し、新車の香りを楽しんでいた。
ゴォオオォ〜…
電車が通過し、前を走るダンプが踏切を渡る刹那、怪音が響いた。
バキバキメキメキ…ブチン!!
音が止む前に俺のトラックのフロントガラスは真っ赤になった。
タバコを持ち、窓から手を出していた為、腕もスプレーで吹いたように赤くなっていた。
これは…血だ。
ダンプの後輪には、自転車が挟まっていて、ハンドルとカゴが見えていた。
自転車のカゴが後輪からはみ出ている…、何が起きたのかはわかっている。
頭は働くのに身体が動かない。
ダンプが停車したのは踏切を越えてからだった。
俺はトラックを降りた、踏切の中には血の跡がタイヤのパターンの形で綺麗に彩られていてまだ乾いてない、赤色だ。
携帯電話が落ちている。
事故の原因は多分これだ、メールをしてたのだろうか? 文字入力画面のままで壊れてはいない、ダンプの後輪に巻き込まれる前に手放したんだろう…。
踏切を越えて、ダンプに近づくと強烈な焦げ臭さが鼻を襲った。
生きては…いないな…、誰が見ても即死だ、自転車は紙屑のようになっていた、タイヤの溝には人間の歯や髪の毛、靴、血……。
地獄絵図、そんな表現が可愛く思える程に、凄惨。
更に不幸は重なる。
トラックの後輪に、赤ん坊が挟まっていた、絶命している。見たくもない、赤ん坊は上半身がまだ原形を留めていて、右手には何かのマスコットが力一杯握られていた。
涙が何故か流れ出した。
母親が携帯を見てなければ?運転手が気付いていれば? そんな事が一瞬よぎった。
何故だろう?俺はひどく冷静だ。
ダンプのドアを開けた…。
そこは赤色だった、俺がドアを開けるまでに、自分で手首を切り、自殺した。
躊躇いはなかったみたいだ、手首は殆ど腕から繋がっていない、止めに首にカッターを刺している。
誰も生きていない。
警察と救急車が到着したが、俺はただ立ちすくんでいた。
警察官に状況を説明したのはその二日後だ。
セラピーや精神科に通い、トラックに乗れるようになるのには半年かかった、まだ踏切を見ると少し心拍数が上がってしまう。
最後に、俺は運転手で、加害者になったり、されたりするが、歩行者や自転車は被害者にしかなれない、もし毎日自転車に乗るなら、通勤が歩きなら、交通弱者だから!と、トラックや車が止まるのが当たり前だと思うのではなく、ちゃんと注意して見てほしい。
また誰かが凄惨な光景を目に焼き付けてしまわないように。
おしまい
怖い話投稿:ホラーテラー レゾナさん
作者怖話