これは俺が18歳くらいの時に体験した話なんだけど、あまり怖くないかも知れない。
免許を取り、車を買ったばかりの俺は、大学の友達Aを誘い、初めての長距離ドライブで田舎のお爺さんの家に向かっていた。
片道3時間くらいで、地図と道路の看板をたよりに車を走らせていたんだ。
いつもは親父の運転だったから、迷わずに辿り着けるかドキドキしてた。
A「おいおい。ちゃんと道わかるのか?」
俺「いや〜。多分こっちだと思うんだけどな〜」
そんな会話をしていると地図を見ていたAが叫んだ。
A「おい!道を間違えているぞ!この道を真っ直ぐ行くと〇×市だぞ?」
俺「マジで?戻った方がいいか?この先に行ける道ないの?」
車を走らせながら、そんな会話をしていると、道の先に曲がれる脇道を発見した。
A「お!あそこ曲がれ。地図に載ってないけど、方向的にあっちだから」
俺「行き止まりっぽくない?」
その脇道は山の方へと真っ直ぐに続いていた。道の先には大きな森が、ぽっかり口を開けて待っている。
A「ばか!もし抜けれたら、めちゃくちゃショートカットだぞ!」
俺は渋々、脇道に左折して森の中へ入っていった。
左右を林で囲まれ、舗装もされていない道をしばらく走っていると、辺りはどんどん暗くなっていく。
心細くなった俺は携帯を取り出してみた。
A「おーおー。免許取りたてのクセに、携帯見ながら運転かよ」
俺「…おい。お前の携帯、電波あるか?」
A「…あ。圏外だわ」
俺「俺もないわ。戻るか?」
A「ばか、Uターン出来るスペースないだろ!こんな山ん中でタイヤが嵌まるとか勘弁してくれ!」
俺達もどんどん山の奥へ進む道にビビり始めていた。相談した結果、Uターン出来る場所を発見したら、そこから戻る事にしていた。
1時間くらい山の中を走っていた。その辺りから俺もAもおかしな事に気がついた。
ついさっき通った緩やかな右カーブが続いている。それもずっと。
螺旋状に山道を上がったりしている訳ではない。
道路の表面に細かい凹凸はあるが、極端に登ったり降ったりはしていないはずだ。
俺達の感覚が正常なら、5分くらいで右周りに一周している。
俺「同じ所をぐるぐるしていないか?」
A「…俺もそう思う」
ありえない事が、現実に起こってしまった。一本道を真っ直ぐ来て、円状の道をぐるぐる回る訳がない。
そして俺達は「本当にぐるぐる回っているか」を確かめ為に、道路の真ん中に空き缶を置いて目印にした。
5分後、車を走らせていた俺達の視界に「目印の空き缶」が映った。
A「うそだろ…」
俺「マジかよ…」
さすがに背筋に冷たいものを感じながら、俺達は「気づかない内に、この道に入った」という結論に達し、もう一度出口を探しにゆっくりと車を走らせた。
ゆっくり車を走らせて、10分くらい経った頃だと思う。
俺「落ち着け〜落ち着け〜気づかない内に、何処からかこの道に入ったんだ…どこだ?どこだ?」
A「おい!車を停めろ!」
隣で突然、大声をあげたAの声に驚き、俺はブレーキを踏んだ。
俺「なんだ!?出口か?」
Aが車から降りて、辺りをキョロキョロ見渡している。
俺「おい!何なんだ?」
A「…ココさっきの場所だ」
俺「それはわかってるって」
A「空き缶はどこだ?」
俺「…あ!」
そう、さっき「目印の空き缶」を放置したまま出発したのに、それの空き缶が消えていた。
…時間は夕方の6時になろうとしていた。俺達の頭の中は「早く此処から抜け出したい」それでいっぱいだった。
そして…
A「暗くなる前に、どうしても確かめたい」
そう言ったAを「目印の空き缶」が消えた場所に一人残し、俺は再び車を走らせた。
バックミラーに映るAが、遠ざかる俺を見つめている。
ドクン…ドクンドクン…と
俺の心臓の鼓動は、とてつもない不気味な予感で高鳴っていった。
もしもAが消えていたら…そんな不吉な恐怖を抑えながら、必死にハンドルを握っていた。
5分後…
もう少しでAのいる場所だ…俺の緊張は極限まで高まっていた。
俺「…!」
Aがいた!無事だった!
俺は車から飛び降りて、喜びながらAに声をかけた。
俺「おーい!どうだった?」
A「…」
俺「おい!無視すんなよ」
スッ
俺「!!!!!」
無視するAの肩を掴もうとした俺の手が、Aの身体をすり抜けた!
Aは俺が見えないようだった。俺が何を言っても反応しない。Aの身体にも触れない。
俺がパニックになりかけた時だった。突然Aが左の林へ走り出した。
俺はAが走った先に視線を向けた。ガサガサと草木が動いている。
そして、森の奥へ逃げていく「小さな女の子」の後ろ姿を見た。
Aは「小さな女の子」を追いかけて行ったようだった。
俺もAを追いかけて、森の中に入っていった。
恐怖よりも、「ここでAを追いかけないと、二度とAと会えない」そう直感したんだ。
…続きます。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話