一昨年の夏、僕の最愛の彼女が死んだ
突然の事故だった
前方不注意の車両が、学校帰りの彼女をはね飛ばしのだ
近くを偶然通りかかっていた友達によると、一瞬の出来事だったと言う
それからすぐに病院へと搬送され、生死の狭間を彷徨っていたらしい
僕のもとに連絡が届いたのは、事故から1時間が経過してからだった
その頃僕たちは、お互いのすれ違いで、喧嘩をしたばかりだった
事故の知らせを聞いた時、彼女の状態よりも先に、
「オレの本心を知りたいがために、友達に頼んで、わざと事故に合ったふりをしてる?」
と考えてしまったことが、今となっては悔やまれる
連絡をくれた友達の動揺した雰囲気で、事の重大さに気付いた僕は、身支度一つせずに家を飛び出した。
外は夜だというのに蒸し暑く、走っている身体にかなり堪えた
そんな無我夢中で走っている時、一本の電話が鳴ったのだ
着信表示は「彼女」になっていた
思わず走るのを止め、一呼吸おかぬまま電話に出た
「あ、もっしもーし。わたし」
それはいつもと変わらない彼女の声だった
「ハァハァ…お前、事故ったんじゃないのかよ?」
「はぁ?事故?!なに言ってんのよ。私を勝手にころさないでよねー」
「なんだよ…ハァハァ。いたずらかよ」
「なに?そんなに私のこと心配してくれたの?」
「バカ!当たり前じゃねぇかよ!お前がいなくなったら誰が俺の昼飯作ってくれんだよ」
「あ、何そっれ!ひっどーい!」
「はははっ!ごめんごめん。でも生きててよかったよ」
「はは!そっか~。そうだ、言いたいことがあったんだ。」
「え?なによ?」
「ごめんね。迷惑ばかりかけて」
「もうあの時のことはお互い水に流してさ。また仲良くやってこ」
「ううん…ちがうの…私、あなたにちゃんと言いたかった。顔を見て、『ごめんね。これからもよろしく』って。でも、無理なんだよね」
「なんでだよ?別れるつもりなの?俺にはお前しかいないんだって!」
「もう!バカ!ほんといつだって…鈍感なんだ…から…」
「なにお前、泣いてんの?」
「泣いちゃ悪いの?…もっと一緒にいたかったよ…」
「ちょ、ちょっと、どうしたの?」
「ごめん。もう行かなきゃ。最後に言わせて……『これからもずっとあなたの傍にいるから』」
「どこ行くんだよ!ちょっと切るなよ!」
「それじゃ。元気でね…。ありがとう…愛してるから…」
「お、おい!」
ガチャ、ツーツーツーツー
その数分後、友達から彼女が息を引き取ったと連絡を受けた
病院では、そこで寝ているかのように綺麗な彼女が死んでいた
あのときかかってきた彼女からの電話
思い出すだけで悲しくなってくる
こうなると知っていたら、僕も最期に伝えたかった
「あいしてる」…と
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話