「どんなに強いタバコを吸っても、吸った感じがしなかったんです」
ある日突然という訳でなく、いつの間にかAさんはそれまで吸っていたタバコでは何も感じなくなったのだという。
「いろいろ銘柄を変えてみたけど、どれを吸っても満足しないというか」
一服したあとの満足感が無くなった。
「そのかわり、タバコを吸わなくてもイライラしなかったんです」
それでもタバコは止めなかった。10年以上タバコを吸い続けているAさんは、一服することはもはや手癖のようなものだった。
「それで、毎日違う銘柄を吸うようになったんです。」
いつものように、昼休みに一服したときだった。
Aさんはそれまで体験したことのない強烈な吐き気に襲われ、気を失いそのまま病院に運ばれた。
「胃ガンでした」
入院先で、Aさんは胃ガンを患っていることが分かった。
「医者からは、運が良かったですね、と言われました。間違なく手術で治る段階だったそうです」
しかし、吐き気に襲われ失神した原因は分からなかった。
「きっと、父が教えてくれたんだと思います」
Aさんは中学校に入る前に、父を胃ガンで亡くしていた。
「倒れたときに吸ったタバコが、父が吸っていた銘柄だったんです」
現在Aさんは元気に働いている。もちろん、もうタバコを吸うことはないという。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話