中学の時に体験した、不思議な話しです。
入試を控えていた僕は、夜遅くまで勉強をしていました。
一息つけようとベットに倒れ込み、雑誌に手を伸ばした時に、見てしまったんですよね…。
うつ伏せた状態で、ベットの脇にあるサイドテーブルの上の雑誌を取ろうと、顔をその方へ向けた時、サイドテーブルの奥に和服を着た女の人の下半身が……。
『えっ、何で?』
その存在が何なのかを確かめる為に、それの全体を見ようと体を起こそうとしたのですが、生まれて初めて金縛りと言うやつに掛かったみたいで、体を動かす事が出来ませんでした。
その初体験に驚いていて気が付きませんでした。
和服姿のそれが、少しずつ下へと下がっているのを。
なんとかして、この部屋から逃げ出したいと、必死に体を動かそうとするのですが、よく聞く金縛りの体験談と全く同じで、ピクリとも体を動かす事が出来ない事に戸惑いながらも、和服姿のそれが消えていなくなっている事を願い、目線を元に戻したのですが……。
願い叶わず、その姿はまだそこに有りました。
それも、最初に見た時よりも……。
相変わらずうつ伏せ状態で、体を動かせずにいる僕は、段々と和服姿のそれの姿が沈んでいくのに目が離せませんでした。
襟から首に、そしてアゴへ…。
『見ちゃいけない、見ちゃいけない』
段々と高まる恐怖心で、嫌な汗が顔に滲み出して来ました。
女の姿は、床に吸い込まれて行くように、ゆっくりと沈み続けていました。
その女の口、鼻、そして目………。
目を覚ました僕は、時計を見て呆然としました。
ベットに倒れ込んだ時は午前1時過ぎだったのに、今は午前3時半。
決して眠くは無かったのに、2時間半もの間意識を失っていました。それも、うつ伏せのままで。
ベットから起き上がり、部屋から出た僕は、一階の居間のソファーに横たわり、暫くの間天井を見つめていました。
目を閉じる事が出来ませんでした。
目を閉じると、又あの和服姿の女の顔が現れて……。
とても白く、透き通った肌。
頬は全く血の気が無く、そして目…。
大きく見開かれた目は黒く、その奥には闇が広がり、僕はその目を見ている内に気を失ってしまったのです。
祖母にその話をすると、祖母の母親。僕のひいばあちゃんの小姑さんっていう人が、ある日気が狂い、箸で自分の目を何度も、何度も突き刺したのだと聞きました。
「成仏出来んでおるんやろな…」
祖母は悲しそうに手を合わせていました。
その方はその後、原因不明の病気で亡くなったとの事です。
ありがとうございました。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話