古い話しで恐縮です。
私がまだ二十代の頃体験した実話です。
ある、晩秋の午後、友達と二人市内にある紅葉スポットに出掛けました。
そこは、断崖絶壁で高さが、約三百メートル位はあって市内を一望できるビューポイントになっていました。
充分景色を満喫した私達は、夕暮れも近づき帰る事にしました。
気がつくと、他の見物客の姿もまばらでした。
駐車場までの道を歩いている頃には、もう辺りは薄暗くなっていました。その時でした。
下から頂上に向かって、登って来る二人連れの姿がありました。
すれ違いざま、これから見物ですか?とか、もう暗くて何にも見えませんよ、とか一言二言会話を交わして、私達は駐車場への道を急ぎました。
この二人連れはどうやら母親と小学生位の女の子の親子連れだと思われました。
やっと駐車場に着いた頃にはもうすっかり暗くなっていました。
車に乗り込もうとした時でした。
かすかではありますが、嫌~とか、嫌だよ~とかそんな声が聞こえた気がしましたが、気にもせず車に乗り帰宅しました。
翌朝、家の電話の音で目が覚めました。
電話に出てみると、昨日の友達からでした。
開口一番朝刊を見ろと言われ、朝刊を開くと、私の目はある記事に釘づけになりました。
その記事には、親子連れか?飛び降り、無理心中とあり、場所と時間から昨日私達がすれ違った、あの親子連れに他ありませんでした。
私達が駐車場でかすかに聞いた、あの嫌だよ~と言った声は、少女の最後の言葉だったのでしょうか…?
数十年経った今でも、忘れられない出来事です。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話